act.54 ページ4
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どれくらいの時間、そうしていたのかわからない。
泣きじゃくるわたしを黙って抱きしめてくれるユンギ。
髪を撫でてくれる手に、また昔を思い出して安心する。
どうしてわたしの前から消えたのかとか、いなくなった後何してたのかとか、何を考えてどんな風に過ごしていたのかとか…
"本当に聞きたいこと " は、たくさんある。
ユンギの腕から離れようとすると、わたしを抱きしめる腕の力が弱まった。
まだ腕の中にいるけれど、恐る恐る見上げると「鼻真っ赤。」って笑ってる。
あまりの至近距離に恥ずかしくなって、グッとユンギの肩を押した。
YG「Aといろいろ話したいところだけど、この後仕事とかあるだろ?」
小さく頷くと、ユンギの指がわたしの涙を拭った。
YG「俺、しばらくここに滞在するから、いつでも来て。その時きちんと話そう?」
「だからカードキーは持ってていいよ。」って言ったユンギはすごく優しい表情だった。
YG「これ、俺の今の連絡先。登録しといて。」
ポケットの中から小さな紙を取り出して、それを開くと11桁の数字。
「これ…今日ずっと持ってたの?」
YG「ん。Aが…変わってなかったら今日渡そうと思ってた。」
ユンギの言葉に、また恥ずかしくなって慌てて目を逸らす。
変わってなかったら…?
って、わたしの気持ちが…?
恥ずかしくなった気持ちを隠すために、カバンの中に慌てて渡された紙をしまった。
自分でも残りの涙を拭って、今度こそドアノブに手をかけた。
あぁもう最悪。
絶対メイクヨレちゃってる。
ドアを開けて外に出ると、「A」って、また名前を呼ばれて振り返る。
YG「今日のことはグクには言わないで。」
「え?…なんで?」
グクもユンギに逢いたがってたし、ユンギを見つけるためにグクは歌手になったんだよ?
YG「んー…驚かせたいから。だから俺がシュガってことは秘密にしてて。」
「…でも、」
YG「いいから。秘密。」
「…わかった…。」
カンの鋭いグクに、隠し事なんてできるかな…って不安しかないんだけど…
でも。
いたずらっ子みたいに笑うユンギに、何も言えなかった。
YG「暫くは、2人だけの秘密な。」
人差し指を立てて口の前に持ってきて「しー。」って笑うユンギに心臓が跳ねる。
無邪気な笑顔は、昔と変わらない。
変わらないものを見つけて、手繰り寄せるとすごく安心する。
それは。
やっぱり、わたしが弱いからだろうか。
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まりぶ〜(プロフ) - コメント失礼します!ほんとに、今読んでいる作品の中で1番好きです!このご時世いろいろ、あると思いますが、頑張ってください!これからも作品楽しみにしています!ファイティン! (2020年5月4日 2時) (レス) id: 035bd86621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Y | 作成日時:2019年4月21日 0時