57 カップケーキ ページ10
『サンジー』
騒がしい甲板から木製のドアを控えめに開けて、Aはひょこりと顔を覗かせた。ふわりと漂う優しいバターの匂いに鼻を鳴らしていると、キッチンに立っていたサンジの視線が向けられる。慣れた手つきで殻をゴミ箱に捨てると、彼は「おう」と返事を返した。
ｻﾝ「どうした？腹減ったのか？」
『んん…あのね』
手招きされるがままに扉を閉め、A は背中から一冊の絵本を取り出す。少し前に発声練習に使っていた冒険物語だ。ぺらぺらと何枚かページをめくり、Aはある挿絵を指差した。
『これ』
可愛らしいお菓子の国の絵だ。クッキーでできた机の上に、艶々のクリームがたっぷり乗ったカップケーキが山盛り置いてある。ほう、とサンジはAの顔と絵を見比べた。
ｻﾝ「作ってみたいのか？」
『うん。…だめ？』
ｻﾝ「だめなんてこたァないさ。丁度今日のおやつもプチフールだ…一緒に作るか？」
『！ うんっ』
まず手を洗え、と流し台へAを誘導し、サンジは卵割りを再開する。わくわくとした様子の幼子に、自然と笑みが溢れた。
ｻﾝ(ちょっと前まで、「何かやりたい」なんて言い出すとは思えなかったのになァ)
拾われた直後のルフィに連れ回されていた時と比べてみれば、今のAは見違えるほど好奇心旺盛になっていた。無表情だった顔も感情をよく映すようになったし、「名前を言えるようになりたい」とできなくても諦めずに練習し続け、そして今回のお菓子作りにまで興味を伸ばす姿勢。正直な所Aを船に乗せることへ反対派だったサンジだが、良い影響を受けてくれているようでどこか嬉しかった。
ｻﾝ「よし、じゃあこのボウルを優しくかき混ぜてくれ」
『やさしく』
かしゃかしゃ、とバターと牛乳が混ざる。粉砂糖を入れていけば、だんだん綺麗なクリーム状へなっていった。
ｻﾝ「お、上手いな。じゃあこれに色をつけて…」
小分けにしたクリームへ色をつける。オレンジと水色のクリームを作って慎重に小さなケーキの上に絞れば、少しいびつなカップケーキの完成だ。
『できた！』
ｻﾝ「初めてにしちゃ上出来だな。ナミさん達に持って行こうか」
『うん！』
嬉しそうなAにケーキの乗った皿を渡し、二人で甲板に出る。喜んでくれるかな。ああ、きっとみんな大喜びだ。そんな会話をしながら階段を降りる、瞬間。
ﾋﾞﾋﾞ「みんな来て！！大変っ！！」
ビビの動転した声が船へ響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーね(プロフ) - お待たせしました続編制作致しました…！次の話でもよろしくお願いします！ (12月30日 23時) (
レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 初心者です！さん» コメントありがとうございます！更新遅くなっちゃってごめんなさい（ ; ; ）頑張ります！！ (11月26日 16時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
初心者です！ - 更新頑張ってください！＆更新お疲れ様です。 (11月26日 16時) (レス) @page39 id: 4136f150ea (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 蘆花さん» コメントありがとうございます！宝石の国要素は今んとこマジで要素でしかないのでもっと見せていけたらいいな…更新頑張ります！ (11月8日 20時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - んー可愛い！宝石の国要素マジで好きです！…もし砕けてしまったら記憶とか…なくなっちゃうんでしょうかね。クッ…見たい…。更新応援しています！ (11月8日 19時) (レス) @page28 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あーね | 作成日時：2023年9月21日 22時
