85 ドクトリーヌ ページ38
ガクン、と落下する感覚で、Aは反射的に目を開けた。
『…っ！』
途端、視界になだれ込んできた光に目が眩む。何度か瞬きを繰り返せば、ツンとした薬品臭と古びた本の香りが辺りに漂っているのに気がついた。
ここ、どこだろう。体を起こすと、厚手の布団がずり落ちて冷えた空気に晒される。どうやらベッドに寝かされていたようで、服装も見覚えのないパジャマ姿になっていた。
「おや、もう起きたのかい！？」
不意に、しゃがれた声がかけられる。パッと発生源へ視線を向けると、老婆…というには若々しい、妙齢の女性が部屋の入り口に仁王立ちをしていた。
「ヒーッヒッヒッヒ…随分とタフだね小僧！」
『…だれ？』
怪訝な顔で問い掛ければ、女性はこちらへスタスタと歩いてくる。そのままAの肩を押し、立ちあがろうとしていた体をやや乱暴にベッドへと戻した。
『わっ』
ｸﾚ「あたしは“Dr.くれは”。ドクトリーヌと呼びな！」
どくたー、くれは。聞き覚えのある単語に、Aはハッと息を吸い込む。ドルトンに教えてもらった“医者”と同じ名前だ。じゃあ、この人が。
『医者！？』
ｸﾚ「ああ？」
『おねがい、ナミ達、なおして！』
必死に言い募るAに、Dr.くれははぐびっと手に持つ酒を煽って笑った。
ｸﾚ「とっくに処置済みさね…皆隣の部屋で寝てるよ、心配しなくていい」
Aの表情が晴れる。ほっと胸を撫で下ろし、Aは頭を下げた。
『ありがとう…あ、えっと、ドクトリーにゅ…ヌ！』
ｸﾚ「ヒーッヒッヒッヒ！」
辿々しく礼をするAに、Dr.くれはは上機嫌そうに笑う。ベッドへ足を組み腰掛けると、彼女は「さて」とAの灰色の目を見つめた。
ｸﾚ「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ」
『？』
ｸﾚ「手や太ももにあったひび割れ…あたしが100年以上医者をやってきて、人体にヒビが入るなんて見たこともなかったよ。何か心当たりはあるのかい？」
なるほど、Dr.くれははAの治療もしっかりしてくれたらしい。だが心当たりと言われても、Aはヒビが入ることは知っていれど理由については到底見当もつかなかった。うーん、としばらく考えて、Aは口を開く。
『山のぼると、ぶつけるしたら割れた』
ｸﾚ「…そうかい。じゃあ聞き方を変えようか」
的を得ない回答に、Dr.くれはは笑顔を真剣な顔に変えた。
ｸﾚ「あんたは何者だ、小僧？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 248人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーね(プロフ) - お待たせしました続編制作致しました…！次の話でもよろしくお願いします！ (12月30日 23時) (
レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 初心者です！さん» コメントありがとうございます！更新遅くなっちゃってごめんなさい（ ; ; ）頑張ります！！ (11月26日 16時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
初心者です！ - 更新頑張ってください！＆更新お疲れ様です。 (11月26日 16時) (レス) @page39 id: 4136f150ea (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 蘆花さん» コメントありがとうございます！宝石の国要素は今んとこマジで要素でしかないのでもっと見せていけたらいいな…更新頑張ります！ (11月8日 20時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - んー可愛い！宝石の国要素マジで好きです！…もし砕けてしまったら記憶とか…なくなっちゃうんでしょうかね。クッ…見たい…。更新応援しています！ (11月8日 19時) (レス) @page28 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あーね | 作成日時：2023年9月21日 22時
