私の彼の事② (ページ21)

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それは私のせいページ21

「A、ちょっとこっち来んといて」

「え？」

買い物してきた物をキッチンストッカーにしまって、
くるりと体を反転させた瞬間にリビングにいる彼からそんな声が聞こえてきたので、
何を言ってんのかとそのまま歩き出そうとする私。

「動かんといて！」

急な大声にビクついて体は固まったものの、
何事か全く分からずに妙な緊張感が私を襲う。

「な、なに？どうしたん？」

「ちょっと」

「なに？！」

「虫、」

彼の手には暑い時期に活躍するスプレー。
そこで瞬時に察したけどもう既に時は遅くて、
この数分私と一緒に時が止まっていたであろう黒い物体が私に向かって走り出した。

「ぎゃあああっ！！」

ヤツはスプレーを振りかけたら尚更、
息絶える前の最後の力なのか動きが早くなる。

CMみたいにはいかない。

ヤツと戦う彼の横で狂気乱舞する私。

「ちょ、A！」

「いやあぁあああっ！！」

「あっ！あぶなっ…！！」

彼の"危ない"という声が聞こえたけど、
既にスリッパはツルンと滑っていて、
どうにもこうにも立て直すことは不可能。

そんな私の腕をキャッチした彼。

その勢いで彼に思いっきりダイブして、
彼に抱きしめられた形でそのまま転倒。

そう。
ドラマとかでよく見るやつ。