桃李パイセンの抜け駆け ページ13
アカデミー賞授賞式から数日。
事務所にトロフィーを入れに行ったら、
今は休みのはずの早瀬が居た。
「あっ、桃李くんおつかれー」
「おつかれ。何してんの？」
「みんなのトロフィー見てた」
「てか今休みじゃないの？」
「そうなんだけどさぁ、暇なの。今日まだお仕事ある？」
「今日はもう終わった」
「じゃあ遊びに行ってもいい？」
「おあずけくらっただろ」
「はぁ、ご飯会まで1人で過ごそうって決意したけど無理。やっぱり無理」
ブー垂れながら、
俺の手からトロフィーを取ったら、
ショーケースにそっと収める早瀬。
「いやいや、俺のやつ」
「いいなー、最優秀主演」
「早瀬もまた来年だよ」
「頑張る…てかさ、遊ぼうよ」
「俺は全然いいんだけどさ、」
「じゃあ今から行く！」
「…じゃあせめてマネさんに言おう」
「言ったらダメって言われるよ」
「それでもだよ」
早瀬は何にも思ってないんだろう。
単純に俺じゃなくてゲームにハマってるだけ。
「すっごい上達したんだよ！その成果見せてあげる」
「1人で操作出来るようになったんだ」
「今ずーっとやってるもん」
「え、廃人なの？」
「桃李くんに言われたくないわ」
相変わらずの切り返しで、
口が悪いのもそうだし、
子どもっぽい所もそうだし、
かと思えば大人びてる所もあるし、
逆ギレもするけど結局は仕事もちゃんとこなす。
何もかもひっくるめて、
それが早瀬だけど、
授賞式の時、
衣装の事でなんやらかんやらうるさかったけど、
最優秀に選ばれた時にちょっと目を潤ませて、
俺に抱きついて来た早瀬が、
ほんとの早瀬なんだと思った。
思ってしまった。
正直今早瀬が家に来たら、
俺は平常心で居られるかどうか微妙な所にいる。
やべー…、
メタルギアなんかやってる場合じゃねぇんだけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 184人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Lily | 作成日時：2020年6月26日 4時
