らくだい魔女と両思いのち片思い〜ライラックの花言葉を君に捧ぐ〜

※魔力の糸 ページ4

カイトside



静かに、呼吸をする。使い物にならなくなった右手がじくじくと痛みを訴えていた。



ベネス──否、アダムが反応を楽しむように笑みを浮かべてこちらを見つめている。



けれど……僕の胸の内は冷えていた。ただ、コイツに攻撃する度にわだかまって渦巻いていた感情が、消え失せている。



コイツが義父さんじゃないのなら。もう、義父さんがその体に戻ってくることがないのなら。



もう──



カイト「……殺しちゃっても良いかな」



すっと目を細めた。昔、本当に昔、記憶が曖昧なほど前に、義父さんが浮かべた笑顔を一瞬だけ思い出す。



アダムの浮かべる笑みとは違う、"義父さんの"笑顔。



左手の指に絡まった魔力の糸がピンっと張る。もういい。迷いなんてものは、無い。



気づかれないよう極限まで細くした糸にできるだけの魔力を流し込んだ。



カイト「覆え」



突然、アダムがグッと苦しそうに呻いた。アダムの魔力は"覆った"。もう魔法は使えない。



カイト「囲え」



アダムの周りに薄い膜が張った。結界だ。これで、逃げることもできない。



カイト「捕らえて」



僕の指に巻き付いている糸の２０倍の太さの縄がアダムの体を拘束し



カイト「締め上げろ」



きつく締め付け、圧迫した。



・

※『悪魔』と『大切な人』→←呪いと仇

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す