6 ページ6
．
．
A「………」
ゴーッ、 ゴーッ、
テーブルに振動して、強い音を立てるスマホ
表示されている名前は見ずとも分かる
．
そっとそれを手に取り、足元の荷物カゴに入れたトートバッグの中にぼすっと落し入れる。
慧「…」
慧さんは静かに、ゆっくりと瞬きをして、それから
あ、そうだ と呟いて立ち上がり、
慧「食う？」
5センチ四方ほどの袋を差し出してきた。
ミックスナッツが入っている。
聞かないんだ。『電話出なくていいの？』って。
おずおずとそれを受け取って、すでにポリポリ食べ始めている慧さんに続く。
甘くなっていた口の中が、チェダーチーズと黒胡椒の風味でリセットされるのを感じる。
A「……なんか、ありがとうございます」
慧「あ、ナッツ？300円でぇす」
A「へ？！お金取るんですか？！」
慧「はははっ、嘘だよ嘘。」
お腹からくつくつ笑う慧さんに、また緊張をほどかれてしまった。
いつの間にか着信は止んでいたけれど、なんだか今日のくさくさした気持ちはどこかへ行ってしまったように、気持ちが落ち着いていた。
ぬるくなり始めたルイボスティーをくうっと飲みきって、
A「じゃあ、そろそろ」
と 席を立つ準備を始める。
慧「もう帰んの？つまんねー」
A「なんて事言うんですか」
軽く笑いながらもレジに向かった私
代金を払って、お釣りを受け取ろうとして手のひらを上に開いた時
小銭をくれようとしていた慧さんの手が止まる。
慧「あのさぁー。これね、マジなんだけど、」
A「？」
何だろうと身構えた瞬間、背後で扉の開く音がして
「うわ、ラッキー。めっちゃ空いてる」
1組のカップルが店に入ってきた。
慧「いらっしゃいませ。お好きな席どうぞ」
そちらの方に気を向けたからか、お釣りの分の小銭が手のひらに落ちる。
何を言おうとしたんだろう？
……また今度、立ち寄ったときでもいっか。
．
A「あの、ご馳走様でした」
1人で全て対応している慧さんに、さっきの続きを聞き出せる雰囲気ではなくなり、私は会釈だけして味噌を撫で、そそくさと扉を開けた。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まひろ | 作成日時：2023年4月29日 19時
