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重くなった体を中和してくれるような程よい甘さに息をつく。
慧「あっ、ケーキとかもあるんだよ、うち。如何ですか？おじょーさん」
A「あ……ほんとだ」
ほとんどメモのような白い紙に、さらさらと書かれた文字。
ガトーショコラ
タルトタタン
2択なのが潔くて好感が持てた。
A「美味しそうですけど、今日はカフェ行き過ぎてるのでまた今度にします」
慧「あははっ、そっか」
A「えっ」
ギィ…と音を立て、私の隣の椅子を引いて腰を下ろした慧さん。
えっ。この人オーナー、だよね？
お客さんの隣に座っちゃうわけ？
A「……あの、」
慧「んっ？」
気がつけば慧さんの手にも大きなマグカップが握られていて、彼はそれをはふはふ冷ましながら「あっちぃ」とか何とか言ってすすり始めた。
A「休憩ですか……？」
慧「そ。今日マージ疲れた。客多すぎ」
オーナーらしからぬ口の悪さに笑ってしまいそうになりながらも
A「私もその客の1人なんですけど」
慧「んぇ？あー……そっか。 働く？」
A「はい？」
慧「働く？うちで」
A「…何言ってんですか」
ズズズッ、と……それはまるで日本茶のようにはちみつルイボスをすすった慧さんの隣で、私はなんだか不思議に、肩の力が抜けていることに気がついた。
……不思議な人。
A「今日、…モテてましたね」
言うはずのなかった言葉が、するりと口をついて出る。
慧さんは黙っている。
言わなきゃ良かった……？
慧「ああ………なんの事かと思った。あの小娘ね」
A「小娘、って」
自分とそう変わらない年頃の女の子達がそんな風に言われるのを、複雑に思いながら
A「慧さんっておいくつなんですか？」
慧「俺？今ねー26。もーオッサンよ」
A「はぁ、…私の5つ上、」
慧「え？！そんな下なの？！」
A「見えませんか？」
慧「大人っぽいね〜、……ねぇ、ほんとに働く？うちでさ」
A「そういうのいいですって」
慧「えー……結構本気なんだけどなぁ」
ああ、なんかいいな、楽。
慧さんと話してると、強ばった心まで柔くなる気がする。
「！」
その時。テーブルに置いた私のスマホが、振動音を大きく立てて着信を告げる。
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作者名：まひろ | 作成日時：2023年4月29日 19時
