まっしろな夜を君にあげる。～Kei.Ｉ～ (ページ3)

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軽く肩を叩くようにかけられた柔らかい声

ぎくりと振り返った私に、眼差しまで柔らかいその人は言う。

慧「今席空いてるよ。ほらどーぞ」

キィ、と小さな音を立てて少し浮かせた店のドアから、暖かい光が漏れる。

コーヒーは飲んできたから、って断ろうか。

A「でも、私コーヒーは」
慧「はちみつルイボスとかあるよ」

……

A「…おじゃま、します」

慧「あはは、いらっしゃい」

なんだか既に彼の手のひらの上に居るような、不思議な感覚

私はその夜『月』に初めて足を踏み入れた。

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店内は壁を向いて座ることができる1人用の座席がいくつかと、2、3人掛けの大きさのテーブル席が2つというシンプルなつくり

壁側にはずらりと本が並び、手前には雑貨が少しだけ置いてある。売り物かな、

1人掛けの席でパソコンを触っていた、スーツ姿の男性が目を擦りながらそれを閉じる。
手元のカップに入った飲み物を、ズッ、と飲みきった。

思っていたより空いている店内に安心しながら、少し迷って男性客から1席空白を開けたところの椅子を引く。

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A「わっ、」

テーブルの下に、ふんわりとした茶トラの猫が座っていて少し驚く。
そういえば、さっきシルエットが見えたよね。

猫の邪魔にならぬようそうっと席につき、目の前にあるメニューを開いた。

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コーヒー、カフェラテ
ホットミルク(いちご・はちみつ・ジンジャー)
ロイヤルミルクティー
はちみつルイボスティー
柚子茶

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思ったより充実しているメニューに、少し心が浮つく。