1 ページ1
．
．
その日は、どうにも家に帰りたくなくて。
．
「じゃあねA、優吾さん心配する前に帰んなよ〜？」
お茶していこうよ、と引き止めた友人がとうとう帰路についた後も、適当に返事を返した私のつま先は家とは別方向に向いた。
．
甘いカフェラテを飲んだばかりのお腹はまだ重く
またカフェに入る気分にもなれない。
適当に足を運ぶけれど、頭の中の雑音を消したくて段々と早歩きになってしまう。
．
ふと目について踏み入れた雑貨屋は今まさに閉店準備中だったようで、申し訳なさそうな表情を一瞬で浮かべた店員のお姉さんに慌てて会釈して店を出た。
．
タコの形の遊具のある公園
可愛い、と…近づいてみたけれど、傍らのベンチに
缶チューハイを片手に持った男子大学生らしき集団が見えて、居心地が悪くなりここも後にする。
．
ちらりと見たスマホの指す時刻は21:03
帰らなければいけないのに、ちっともそんな気にならない。
……ああ、今、私、
居場所がない、ってやつなのかも。
ミルクの甘ったるさが残るお腹の中に、エスプレッソのように黒い孤独感がじわりと広がった気がした。
．
A「……ん？」
ふと立ち止まってしまったのは、普段なら目もやらない路地裏に ぽつんと暖かい灯りが見えたから。
オレンジの混じったような古い電球が、店の看板を照らしていた。
真っ白なボードに1文字だけ、
『 月 』
．
A「………」
雑貨屋…？古本屋？
A「……あっ」
思わずもう一歩、近寄ってしまったのは
オレンジがかったライトの漏れる店内、磨りガラスごしに ぬるりと動く猫のシルエットが見えたから。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まひろ | 作成日時：2023年4月29日 19時
