心の準備 ページ33
家に戻り卒業式の時に撮った写真とさっき撮った写真を並べて飾る
相変わらず死んだ魚みたいな目をして目と眉が離れちゃってる
アラサーからしっかり30代に突入したというのに外見も中身も何も変わっちゃいない
飄々としていて掴みどころがない、いろんなことに興味なさそう
今の時代、嫌われる煙草もいつ見ても口に咥えてる、怠そうに
こんな人なのに
「なんでこんなに好きなのかねぇ」
写真を眺めながら言葉が漏れる
でもこの人とじゃなかったら歳をとってしわくちゃになっても
今みたいに馬鹿みたいなことで笑い合えないだろうな
もし私のことを忘れたって貴方と笑い合えたらそれでいいって思えるのは銀八だから
年齢的に銀八の方が先に…そんなことはあと何十年も先の事だけど考えただけで泣きそうになる
「死んじゃだめだよ」と呟けば写真に写る彼を撫でなる
八「俺ァ死なねぇよ」
「おっわ、お帰り」
八「相変わらず色気のねえ声」
帰宅した銀八に聞かれていて心底恥ずかしい
ただいまくらい言ってくれたっていいのにっ
八「大体な、つい最近まで死にかけてた奴に
心配されたかねぇよ」
「いった…それはごもっともです…」
久しぶりにデコピンもくらって痛いとことを突かれてしまった
散々心配かけてきたくせに、今度は私が心配をしているのはやはり謎の構図だ
額のじんじんとした痛みが懐かしくて嬉しくてニマっと笑えてしまう
ニンマリとしているとふわりと身体が宙に浮き、銀八の顔が近くに見えて、彼にお姫様抱っこをされていると理解するまでに少し時間を要した
こんな状況、誰も見ていない家の中でも恥ずかしい、というか照れ臭い
顔を赤くしたままの私を抱きスタスタと寝室へ向かい、ベッドへ放り、手首をシーツへ縫い敷く
『心の準備でもしとけ』とはやはりそういう事だった
八「俺はなA」
「え?」
八「Aがいる世界でしか生きたくねぇ
お前がいるから生きてられる
Aもそうだろ?」
「うん、もちろん」
八「だから、死ぬな」
1つ重たい契りのような口付を交わせば、2人は身体を重ねて快楽の世界に酔いしれる
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時