portrait (ページ9)

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警備員『まだどなたか残られてますか？』

大我『あ…自分で最後です。』

警備員『わかりました。お疲れ様です』

警備員さんに小さく頭を下げて、
スマホの画面で確認した時間は21:17。

思ったより時間かかったなぁ。

昼休みぶりに吸い込んだ外の空気はすっかり秋の匂いになっていた。

大我『……疲れた。』

そんな独り言を、吐き出したくなる程度には疲弊しているようで、

眼鏡を外してぼやけた視界を手の甲で擦った。

どうせこの時間からは串カツ屋さんは入れないだろうな、なんて
すこし不貞腐れながら"華金"の空気に満ちた駅前の居酒屋街を抜けて、
イヤホンを差し直して通り慣れた改札を越える。

帰宅ラッシュをとっくに過ぎた電車に揺られて

頭の中に流れる歌詞を追っていたらあっという間に最寄り駅。

職場の近くほどの活気はなくともどこまでも付きまとう華金の雰囲気に

少しだけ抗いたくなって、いつもはわざわざ絶対に行かない

駅裏のコンビニまで足を伸ばした。

別に品揃えとかなんかが変わる訳じゃないけど。

なんなら遠くなるから帰りが遠くなるだけなのにな、なんて

煌々と光る青の看板に吸い寄せられるように足を進めた。

大我『……あ。』

「え？」

こんなことってさ、あるの？

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