portrait (ページ4)

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俺の所まで来た女の子は、めいっぱい俺を見上げて

「お兄ちゃんもお写真撮るの？」

大我『…え、あ、うん』

俺の手元のカメラを指さしてそう言うその子に思わずたじろぐ。

「じゃあ、Aちゃんといっしょだね！」

"Aちゃん"と言われたその人は立ち上がりながら
軽く会釈をしたのでこちらも頭を下げた。

確かにその人は右手に持ったインスタントカメラとは別に、
少し古そうな一眼を左肩に下げていた。

あ！もう9時！ママに怒られちゃう！と慌ただしく去っていった女の子に
その人と一緒に手を振って、訪れた静けさ。
なんとも言えない気まずさに取り残されて思わず頭を搔いた。

「…向こう。」

大我『え？』

唐突に発されたその声に思わず振り向く。

茶色のコートから伸びた指先が遊歩道の奥を指す。

「ここ、越えて砂利道通った少し先、今だと金木犀が綺麗です。」

写真撮るんなら、よかったら、と
インスタントカメラを鞄に収めながら俺の来た方向に向かって歩き出す。

「…いいカメラですね。」

すれ違いざま、俺のカメラを見て、

1度足を止めてそう言った耳障りのいい声。

俺の目を見ることなくぺこ、と小さく頭を下げていく横顔が
すごく綺麗で、息が詰まった。

大我『、あのっ』

やっとの思いで声が出た時、その人はもう角を曲がってしまっていて
俺の声が届くことは無かった。

ただ、柔らかな髪を揺らしながら歩く、
どこか物悲しいようなその背中から目を離せなかった。