【A3!】ねぇ。【摂津万里】 (ページ1)

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いつもはいない人がいると、不思議と目が惹かれるものだ。

その人の名前は摂津万里。
ヤンキーとして有名だ。
いつもは学校をサボってることが多い。
珍しいな、なんて頭の中で考えながら横目で彼のことを見ていた。
授業に集中する気はないのか、どこか遠くを見つめている。
何故か妙に気になった。
彼のことが好きかと言えば、そういうわけではない。
しばらくそうしていると授業終了の鐘が鳴った。
今日の授業は集中出来なくて板書するだけになってしまったな。
休み時間になってもぼーっとしていたからか、友人たちに大丈夫？と心配されてしまった。
大丈夫だと伝えて、他愛のない話をしていたら彼の姿はもう無かった。

いつも通りの日常に戻った。
友人たちと他愛のない話をして、笑って、授業を受けて、板書して、摂津万里も教室に居なくて。
なのに、その事実が妙に胸をざわつかせた。

学校も終わり、教室にいる人たちは部活や友人たちと遊ぶため、あるいは私と同じで家に帰るために教室から足早に去っていく。
私も部活に入っていないので家に帰る。
今日の夕飯は何かな、家に帰ったら明日の単語テストのために勉強しなきゃなんて考えながら。
曲がり角を過ぎるとそこには摂津万里がいた。
喧嘩でもしたのだろうか怪我をしている。
余計なお世話かもしれないが、見てしまったら放ってはおけない。

「ねぇ。」
意を決して彼に話しかけた。
ヤンキーに話しかけるだけの勇気など持ち合わせてはいなかったはずなのに。
「あぁ？」
不機嫌そうな顔をしてこちらを睨み付けてくる。
普通に怖い。
なにも言えずに黙ってしまう。
しばらくして、私が怖がっているのがわかったのか睨むのをやめて話しかけてきた。
「俺になんか用でもあるんすか？」
気だるそうな感じだ。
「いや、怪我してたから大丈夫かなって……」
睨むのをやめてくれたお陰で声を出すことはできた。
「あ？あー。」
一瞬、不思議そうな顔をしたが直ぐに理解したのか言いづらそうにしている。
「私の家すぐそこなんで、もし怪我が痛むようであれば湿布くらいはだせますけど。」
私がそう言うと、彼は少し考えた後
「いや、平気だわ。心配してくれてサンキューな。」と言い、その場を離れていった。
なら大丈夫かと安心したが、彼の背中から視線を離すことが出来なかった。
彼の背中が見えなくなると私は家に急いで帰り、夕飯の準備を手伝ったのだ。

これが私と彼が関わっていくことになるきっかけである。