第72話* ページ45
『……なんでや』
ぽそりと呟いては消えた一言。
発熱の原因は、どう考えても小さな家出をしたあの日。
ここ数日の作業詰めで弱っていた体には、当たり前だが夜風は良くなかったらしい。
ルームシェアの住人たちには昨日の時点で体は大丈夫かと心配する声を掛けてもらっていたが、昨日、今日と県外へツアーで遠征に予定だったので、少し感じていた違和感は風邪の所為だと悟られないようにさっさと家から追い出した。
つまりこの家には一人な訳で、やる事はやれるうちにやっておかなければとゆっくりベッドから起床した。
助けを借りることも考えたが、生憎近所の友人たちは同じツアーに参加している為皆居らず、頼れる友達も居ないとなっては致し方ない。
猫たちのご飯を用意し、洗濯物を回し、仕事のメールをチェックする。
いつもは手動で掃除機をかけるが今日は妥協してお掃除ロボットに頼み、食事や買い物も宅配で動けるうちに済ましておこう。
家事の間に無理は出来ないとソファへ倒れ込んで一休み。
こんな体調でも家事が出来て偉いと自分を褒めて、窓の外でゆっくり流れる空を見る。
『(やばい、寝てしまう)』
晴れているが今日の洗濯は乾燥機で済まそう。
ゆっくり目を閉じて徐々に意識が遠のくのを感じ、抗いもせず身を任せて眠った。
そして目を覚ましたのは数時間後、とっくに洗濯は終わって、日は傾きかけていた。
少し眠るはずがぐっすり眠ってしまったらしく、ぼーっとする頭で携帯を確認する。
「2日目1部終わったよ！」とめいちゃんから連絡が来ていたのも気付かず、重い瞼を開けて、明らかに今朝より重い体を引き摺って玄関の置き配の荷物を取りに行く。
喉が風邪でやられているからか、上手く呼吸が出来ずに聞いたこともない呼吸音になっていて、気力だけで立ち上がった体は廊下で膝を着いた。
『(あれ？あれ、？こんなにひどかったっけ？)』
ぐわん、と視界が回転し始め、体を支える為に両手を床に着いた。
堪らず廊下へ寝転んで必死に思考を巡らせる。
『(フローリング、きもちい。救急車、呼んだ方がいいかな)』
考えているうちにまた意識が朦朧とし始め、向こうで鳴く猫の声を聞きながら、意識を手放した。
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憐(プロフ) - ち ひ ろさん» コメントありがとうございます！順次更新しますのでお待ちください！ (8月3日 12時) (
レス) id: 1d38a41f1c (このIDを非表示/違反報告)
ち ひ ろ(プロフ) - 以前はリクエストの素敵なお話ありがとうございました！再びリクエストなのですが、暑い日が続いているので4人で海やプールに行くお話が読んでみたいです。 (8月2日 12時) (レス) id: d14445efc4 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございます。とても助かりました；；今後のお話も楽しみにしております (7月5日 19時) (レス) @page46 id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
RRR(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました！お体に気をつけて頑張ってください。 (7月2日 11時) (レス) @page44 id: 9a70e09dc0 (このIDを非表示/違反報告)
憐(プロフ) - りくさん» ありがとうございます！順次更新していくのでお待ちください！ (6月27日 21時) (レス) id: 1d38a41f1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：憐
| 作成日時：2022年9月9日 23時
