anmのおうち そのに

第49話* ページ15

時刻は朝の6時前、nqrseはズキズキと痛む頭と少し怠い体を起こした。
今日は歌い手達が集まるフェス形式のライブ当日。今回はあらなるめいとAの全員参加で、昨夜まで一緒にライブ確認をしたり「頑張ろうぜ」とワイワイ話していた。
幸い、まだ誰も起きていないようで、静かに部屋を出て洗面所へ向かう。
鏡に映る自分の顔色は最悪と言っていいほど悪い。

「(ライブ当日に体調崩すかね？普通。マジでやばいぞなるせ)」

当日に体調不良になったので休みます、なんて言えるはずもなく、ササッと身支度をして誤魔化し程度にメイクをした。
後は少しだけ胃に何か入れてとりあえず頭痛薬を飲もう。発熱にも効くから万が一熱が出てもそれで大丈夫。と気合を入れて起きてくる3人の為に朝食の準備をする。

何とか3人には不審がられずに直前リハまでこなし、楽屋のソファに深く腰をかける。
久し振りに会う友人達と写真を撮ったり談笑したり、めいちゃんが大量のケータリングを持ってくるので仕方なく食べたり、体はしんどいものの何とか自分の出番まで事は進んだ。
自分はあらきとコラボで1曲、フェスに参加しているXYZメンバーで1曲、ラストに全員で1曲の予定。
色んな意味でドキドキとする心臓を抑えてステージ脇に居ると、あらきに背中を叩かれた。

「珍しく緊張してんね？久し振りだから？」
「…まぁ、そんなとこ。ねぇ、もっかい気合入れて」
「ん？」

不思議に思いながらももう一度背中を叩かれ深呼吸をする。アドレナリンが出てきたのか体の怠さが少し消えた。

「っし。行きますか」
「よろしく、なるせさん」

結果的に言えば、パフォーマンスはいつも通り完璧だった。
ラストの合唱では薬の効果もあってかすっかり体調不良なんて忘れて、最後まで楽しんだ。
観客に手を振って、ステージ側のスタッフや演者に挨拶をしながら楽屋に戻る最中、無意識に気が抜けたのか、足の力が抜けたと気付いたのと同時に目の前が真っ暗になった。

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