デンジ君に借りられる【チェンソーマン】 (ページ4)

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「A、あそこ座れよ」
と指をさされたのは教室の隅の床。
『ん。』
そう返事して椅子から腰をあげる。
『よいしょっと…』
座った拍子に顔を上げると、デンジ君は思ったよりかなり近くにいて、壁に手をついて私をじっと見つめていた。
逃げ場がない。ほぼほぼデンジ君の腕の中だ。
近くで見ると結構綺麗な顔立ちをしている。垂れ下がった目元は何故か犬を思い出して可愛いし、まっすぐ私を捉えるオレンジ色の瞳も綺麗で…。
いやいや私、何考えてるんだろう。
『なんか…近くない、ですか…？』
「そうかァ？俺ァAを借りてるんだぜ。こんくらい近くても大丈夫だろ」
ギザギザの歯を見せてニコッとVサインをして見せてくる。
ちょっとかっこいいかもなんて思ってしまった。
なんか今日のデンジ君は距離感がおかしい。
「隣座るか…」
2人隣同士で床に座っている構図となる。
近い。気のせいなんかではなく、絶対いつもより近いのだ。この１０円のせいか、とポケットに入れた１０円を触った。
「A〜」
甘えたような声で顔を近づけてくるデンジ君。
やばい、正直、甘えてくるデンジ君は犬っぽくてキュンとする。でもそれと好きってことは違うような気もするし、よくわかんない。
『なぁに』
いつもより優しい声で答えると、コテンと肩に頭を乗せてきた。
「ひざまくらして」
『…いいよ』
多分いつもと違うデンジ君の態度に絆されたのだと思う。さっきまで恥ずかしくて嫌だった膝枕もしてあげたくなっていた。このまま何でもしてあげたくなりそう。
デンジ君は私がお姉さん座りをしたのを確認するとゆっくりとふとももに頭を乗せた。
小動物が乗っているみたいで暖かくて心地いい。癖になりそうな感覚。
「撫でろ」
『うん』
さっきのように頭を撫でる。時々、耳に髪をかけてあげるとくすぐったそうに私を見上げるデンジ君が愛おしかった。