セピアに染まる【番外編】 (ページ8)

今日:13 hit、昨日:20 hit、合計:10,708 hit

営業妨害ページ8

あいつは指名客に何かしら買い与える。

新山が大体買うものは服とか化粧品とか。でもお気に入りの子にはアクセサリーをプレゼントして差別化を図る。

今日Aちゃんが珍しくブレスレットを付けていた。自分で買ったのか、それとも新山が買ったのかどっちなのか気になるけど多分後者。

Aちゃんは知ってか知らずか分からないけど嬉しそうに『にーやんに貰ったの』なんて言っている。俺はその姿を見てなんだか虚しい気持ちになった。

他のお客さんにもあげているに決まってんのに。

まあAちゃんもそこまでピュアじゃないだろうからそれぐらいは知ってるか。

なんでよりによって計算高いあいつを担当にしちゃったん。

Aちゃんは現実的なお客さんでいてほしかった。夢見がちな姫じゃなくて、プレゼントなんか貰ってもいつも通りにしててほしかった。

決して他のお客さんをディスってるわけではない。ただAちゃんだけはのめり込んで欲しくなかった。なんでこんなことを思っているのか自分でも分からんけど。

俺はAちゃんに少し意地悪な発言をした。

「あーやっぱりアイツか。アイツまたあげたんや」

俺は遠回しに新山が他の子にもプレゼントを買っていることを匂わせた。

Aちゃんの顔からは笑顔が消え、一瞬だけムッとした表情になった。どうやら夢から覚めさせてしまったっぽい。

ちょっと言いすぎたかも。仮にもお客さんやし今のはあかんかったな。俺はすぐにフォローした。

「けどそれ似合ってるよ。可愛いやん」

似合っているのは事実だし褒めた。ちょっと取ってつけたような感じになっちゃったけど。

褒めたのはいいけどAちゃんの表情は変わらなかった。俺の言葉が引っかかっているっぽい。

さっきより少しテンションが落ちちゃったAちゃんを見て反省した。

お客さんを楽しませるのが仕事なのに何してんだ俺。しかも俺の指名客やないし。

…あいつの営業妨害になっちゃったな。