セピアに染まる【番外編】 (ページ1)

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好きだけじゃ無理ページ1

今日の仕事は最悪だった。

言い方悪いけどクソ客ばっかだった。もう本当しんどい。くたびれた私は早速一服した。

そんな疲れた今日、リピーターのお客さんから差し入れを貰ったのだ。手作りおにぎりという見るからにヤバい差し入れ。もちろん食べない。

食べないけど何となく具材が気になったのでおにぎりを割って見てみた。中にはどろっとした白い液体がついていた。私はそれが何かすぐに分かった。

うわー…最悪。

こんなもん食わねーよと思いながらゴミ箱におにぎりを捨てた。食べ物を粗末にしてるみたいで心が痛むけど仕方ない。

こういう頭おかしいお客さんも中にはいる。もちろん優しい人もいるけど…。こんなやつ相手にしなきゃいけない仕事って何なの？と思わずため息が漏れる。

そうだ、もうこんな時は店に行こう。

イヤな事吹き飛ばして楽しみたい。私はにーやんに会いに行った。

＊＊＊

「もうやだ、早く帰りたい」

ホスクラに来て楽しんでいたはずなのに気づいたら私は誠ちゃんの前で泣いていた。

心が疲れている時ににーやんが別の卓でラスソンを歌ってる場面を見てしまったのが原因だ。

目の前にいる誠ちゃんは困っている。でも誠ちゃんは優しいから私をタクシーで家まで送ってくれた。

「ねえもう無理だよ」

自分つらいですアピールなんかしたくないのに自然と愚痴の言葉が出てくる。

私はタクシーの車内で泣いた。運転手なんかもはや気にしない。誠ちゃんは私の背中を優しくさすってくれている。

お金使う人が一番なのは分かってる。私が100万使ったところで他の人は500万使ってる。

でも今日は、Aちゃんありがとうって隣にいてもらいたかった。

私あとどれくらい頑張ればいいの？

思い悩んでいたらあっという間に自宅に着いた。私がモタモタ財布を出していると誠ちゃんが代わりに払ってくれた。

「ごめんね、立て替えてくれて…」
「えーよ別に。てか返さないでええし」
「え」
「ここがAちゃん家？最近できたアパート？」

話を逸らされたが私は誠ちゃんにお礼を伝えた。誠ちゃんは気にしないでと笑顔で返してくれた。

誠ちゃんは玄関でも私を心配してくれた。どうしてそんなに優しいの。完全に弱っている私は誠ちゃんに帰って欲しくなくて引き止めた。