■知られたくない【番外】 ページ47
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書庫から戻ってる最中、ふと煙草が吸いたくなった。
普段なら部屋に戻ってから喫むそれが異常に恋しくて、近くにあった窓を全開にして、そこから上半身を乗り出した。
「はぁ、うまいなぁ……」
そそくさと取り出した紙巻煙草に火を灯す。先端が赤く燃え上がり、ほろ苦い煙を肺一杯に吸い込んだ。
ここにゾムさんが来たら嫌な顔をされる事必須であるが、この廊下の先には医務室くらいしかない為そうそう人と会う事はない。
「あ、えっ……Aご令嬢！？」
『ご機嫌ようございます、エーミール様』
そう思ったいた次の瞬間の出来事である。
廊下の曲がり角から姿を現したのは、グルさんのお気に入りである海の国の若き王女。
かく言う俺も、図書館にわざと彼女に時間を合わせて通ったりなどして他愛もない会話に励んでいた。我ながらドン引きの所業である。
『お煙草お吸いになられるんですね』
「す、すみません直ぐに消して…！」
『…？お気になさらず』
何て事ない様に微笑む彼女だったが、俺は正直言って気が気じゃなかった。
若い女性には、喫煙者を嫌悪する方も多いと聞いた。吸っててもモテる大先生やコネシマさんの様な例外もいるが、生憎自分がそうではないことを知っている。
「煙は吸いませんでしたか！？匂いが」
『えっと……本当に、私はもう行きますので』
「ッま、待って！」
気遣わしげな顔の彼女に心の距離を感じて咄嗟に手を掴んでしまった、当然驚いただろう少女の肩が跳ねたのが見えた。
しかも俺はまだ片手に煙草を持ちっぱなしであった。
「や、すんません……ほんま、3秒下さい」
『エーミール様？』
未だ貴女に名前を呼ばれるだけでドキッとするので控えて下さい、とは言えず。手持ちの灰皿にまだ吸える煙草を押し当て揉み消した。
「えっと、私、実は喫煙者でして」
『そのようですね？』
「その、匂いには一応気を遣ってるつもりで…！」
自分で喋ってて、こういう所がいかんのやろうなと思う。 話せば話す程言い訳がましくなるそれに内心絶望していた。
＿＿嗚呼、唯一まともに話せる女性にまで嫌われた。
『ふふ、私は嫌煙家ではありません』
「えっ？」
くすっと笑う柔い表情に、己の体温が上がったのがわかる。本当にいつも通りな彼女にここぞとばかりに問いかけた。
「嫌じゃありませんか？煙草を吸う男って」
『いいえ？大人の方なんだなぁと思います』
確かな安堵と僅かな興奮。身体の熱は当分引きそうにない。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
