▼目に優しくない ページ33
syp_side
「全部隊長に通告する、ノーダル国が我が国に対し無条件での降伏を宣言した。全軍速やかに撤退せよ。繰り返す…」
「終わったみたいっすね」
「せやな！」
無線から聞こえるロボロさんの声に俺は静かに肩を下ろした。戦闘続きだったのに隣の先輩はアホほど元気だ。
グルッペンさんとオスマンさんが北の国、ノーダル内地へ招かれた時には相手軍はほぼ半壊状態だったので終息は比較的早く済んだ。
グルッペンさん的にはもっと早く片をつけたかったらしいけど。
「ショッピ君！お疲れの所悪いんやけど、コレ持って城戻って貰ってええか？」
「了解ですトントンさん」
トントンさんの指示を得て自分トコの部隊に招集をかける、終戦の知らせをするのに生憎ここからでは城まで無線が届かない。
だから大抵そういう時は、俺とかチーノが城まで馬走らして条約書や誓約書の模書を持っていく事になっていた。
「動ける奴は全員おるな？城に向かって出発するで」
と、戦場から馬を走らせだしたのが約５時間前の話である。
部下を一度解散させて、幹部用の馬小屋へ向かう。
書庫の裏手側にある小屋の中では“外道丸”達が鼻息荒く俺らを迎えてくれた。
愛馬を繋いで2、3度撫でてやる。さて、エミさんを探さなくては。
そう思って書庫に目を向ける。割と彼は開架式の書庫に居ることが多いから。
「はあ……？？」
中に人の姿が見えた。しかし、そこに見えたのはエミさんではなく青い髪をした女、それと女を撫でているチーノの姿だった。
え、ホントに何してるねん。
呆然とした俺の気持ちが伝わったのか、チーノが此方を向いた。
只馬の足音が聞こえただけかもしれないが。
「お帰りショッピ、終わったんやな」
「ん。で、俺は何を見せられてたん？」
「ん〜？頭のゴミ払ったってただけやで」
嘘乙ですわ。嘘つき男の隣に立ってるご令嬢は心なしか顔色が悪い。
そういや俺血塗れやったわ、忘れてた。
このままエミさん所に行くのもアレやと、チーノにエミさんを呼んで来るように頼む。
二つ返事で了承すると奴はサッと踵を返した、ご令嬢1人取り残して。どないしろと。
「すんませんね、見苦しい格好で」
『いっ、いえ！お勤めお疲れ様です…』
彼女の挙動に合わせて長い髪が揺れる。戦争で赤ばっかり見ていた俺にはそれがどうにも目に刺さった。
血の鉄臭さになんて慣れてないだろうに、気絶も嘔吐もせず努めて笑顔を作る女の、眩しいほど青い髪を俺は黙って眺めていた。
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
