▼脳裏をよぎる ページ30
sha_side
満を持して某国との戦いの火蓋が切って落とされた。
殆どウチが攻め込んでいる感じで相手は防戦一方、今回はウチの防衛軍の出番はなさそうだった。
「シャオロン!今日は一旦引けってよ!!」
「んあー?なんやいいとこやん!」
「ええから戻れ!」
無線を通してホビットから声が飛ぶ。相手の中核目前で撤退させられるのは、納得がいかんかった。
何故だとしつこく聞けば、既にコネシマの率いる部隊が自軍本営に到着しているのだと言う。
「チッ……しゃあないな」
「あっ!お前今舌打ちしたな!?」
小喧しい喚き声をシカトして、部隊へ撤収の号令をかける。前から思ってたけど、オレやっぱこういうリーダー向いてねぇな。
因みにこの間ゾムもおんなじ事言うとった。
「おっ!なんやシャオロン元気そうやん!!」
「当たり前やろ、暴れ足りへんわこんなん」
「お疲れさまっす、シャオロンさん」
本営に戻るとコネシマがオレを出迎えた。すぐ隣にはショッピが居て、その背後には数隊ゾムん所の部隊もいた。
グルッペン曰く、オレは第二陣の動きがあるまでは出番がないらしい。まあ特攻隊としては妥当なとこだ。
ざっくりした作戦会議を終え、火薬と血の匂いが混じる救護テントの方へと足を運ぶ。
テントの中ではぺ神が口早に救護班への指示を飛ばしていた。
「君はどうし……あれ、シャオロン?」
「よぉ、ぺ神。あんま繁盛してないね」
「何言ってんのさ」
「してない方がいいでしょ」と、ぺ神は手を止める事なく返した。ごもっともである。
「まさかシャオロンも怪我してるの?」
「いや?してないけど」
「だよね、何しに行たん」
返り血塗れのオレは一見して重体患者だが、軍医のぺ神がそんな物も判断出来ない訳がなかった。
部下の様子はどうかを見に来た、とは何となく言いづらくて適当にボカした返事をすると、奴は何かを察したのか雑面の下でクツクツとした笑いを漏らした。
「今ンとこ命に関わるような怪我人はいないよ」
「何も言うてないやろ……」
笑い混じりの声に気まずさが募って、さっさとテントを出ることに決めた。
外に出るとちょうど夜の帳が訪れる時間で空は紫がかった色へと変化していた。
鮮やかな紫色の空は、どこぞのご令嬢の瞳を思い出させるようで妙な気分にさせられる。
何とも言い難いアホっ面した、あの女の顔がやけに頭をちらついた。
「はぁ〜、柄やないわ。そんなん」
誰に言うでもない独り言は夕の闇に溶けて消えた。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (4月30日 18時) (レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ! (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます!続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます!続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します! (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます!初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします! (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あん肝ポン酢丸 | 作成日時:2019年8月4日 8時