【d!】ご令嬢が思い出したら？【軍パロ】

▽原因とは何か ページ26

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「睨んでへんやろ」

初めて聞く関西弁の総統は誰が見てもわかるくらい不機嫌で、何をやらかしたもんかと内心ヒヤヒヤが止まらなかった。
呼び方の下りがそんなにご不満だったのかと1人焦っていたが、何かを察したらしいエーミール様が彼に向かってキュッと眉を吊り上げた。


「なんでもええけど、あんまご令嬢に怖い顔すんなよ」

「元々顔が怖いんやから」とバッサリ言い捨てると、亜麻色の髪の彼は私に頭一つ下げて部屋を出た。
普段から敬語で話してる印象だったけど、親しい人には使わないんだなぁ。


「アイツの事は普通に呼ぶんだな」

『えっと……エーミール様の事ですか？』

「それ」

そう言ったきり、総統は口を閉ざしてしまった。今迄の会話と経験則から、ある結論が導き出された。
突拍子もなく、かの魔王のような総統がそう考えるとは思えない結論が。


『グルッペン様？』

「ああ、それで良い」

何かを確かめる如く頷く男に、私は思はずその場にへたり込みそうになった。
この一国を統べる彼の望みはまるで子どもの我儘だ。
本人曰く「休憩時間は自分の立場を意識の隅に置いていたい」とのことだが、呼び方１つでそんなに不機嫌にならないで頂きたい。




「……おい、A？」

『！はい、なんでしょうグルッペン様』

過去の日に飛んでいた意識は正面からくるバリトンボイスで現実へと引き戻された。
私はさも聞いていました的な顔をして言葉を返す、いや実際話自体は聞いていたのだけれど。


『一次産業効率は国によりますから、一概には言えないかと』

「まあ正直さほど農作には興味がないんだがな。国民の生活もあるし貿易でも大きな影響が出るからなぁ」

『我々国は内陸地ですし、平坦な土地も多いので土地的に困る事はあまりないかと』

「ヴェネマーレアは海と接する面積が大きく農業はあまり盛んではなかったな」

『ですね』


極たまにであるがお互いに不利益を被らない範囲で両国の話もするようになった。母国の話になると少しだけ帰りたい気持ちになる。


「はぁ……そろそろ仕事に戻らなくてはな」

『そのようですね』

時計の長針が11の文字盤を指す、もうすぐ休憩時間が終わる。
ソファで仰け反って呻る総統は手持ち無沙汰に、食器を片す私の髪をクルクルと指に巻きつけていた。子どもか。


「農作と言えば、城内にも畑があるゾ」

『そうなのですか？』

「中庭から直ぐの場所だ。見てみるといい」

そう言うと、再び彼は激務へと身を投じた。

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