▽再び転機 ページ20
・
恐怖の夜から３日経ち、城に呼ばれると告げられた日を迎えた。
あの後、私を園に戻すのに再び城壁を登ろうとした某軍人をなんとか宥めてドアから戻るのには苦労したものだ。
ふっと遠い目をしてあの時の事を思い返していると、リズム良く4度木製の扉が叩かれた。ギイと重たい扉を開くと、園で働いている中年の女中が控えていた。
『ご機嫌よう。どうなさいました？』
「ご機嫌ようございます。オスマン外交長官より総統閣下がお呼びであると」
『わかりました、ありがとう。すぐに向かいます』
にこりと微笑みかけると、彼女は深く頭を下げて私の2歩程後ろについた。
此方が声をかけるまで口を利くことすら許されないのだから、女中というのは忍耐力のいる仕事だと思う。
下の広間まで降りると、華やかなご令嬢たちの奥に頭１つ高いオスマン様の姿が見えた。
やっぱりモテるよなあ、外交長官という立場に加えてあの容姿ときたものだ。それは世の女性たちも放っては置かないだろう。
控えめな甘い声にピクリとも表情を変える気配もない彼。どう話しかけたもんかと考えていると、その切長な目が此方を捉えた…気がした。
「お待ちしていましたA王女」
『お待たせしてしまいまして、申し訳ございません』
お互い言葉が手短かなのは、一刻も早くこの場から離れたかったからだろう。
目は口ほどに物を言うとはこの事だ、何でお前がと言わんばかりの視線がチクチクと体に刺さった。
「久々にあんな囲まれたわ〜、ごめんな急かして」
『園に来客は滅多にありませんから、ご令嬢たちも嬉しかったのかと』
「ん〜ふふ、A嬢はフォローが上手やね」
フォローとバレた時点で上手いと言い難いと思うのだけどどうだろうか。
ご令嬢たちに媚びるつもりはないが、嫌でも毎日顔を合わせる間柄なので軋轢は最低限で済ませたい。
いい加減死刑云々は無いと信じたい。城に入ってからいつもの部屋へと向かう方向とは違う道に進んでいることだけが気がかりだ。
「今日は別の部屋なんよ。人が多いから」
『はぁ…』
人が多いとはどう言う事だ。「覚悟して来ィや」と脅かすような声が脳内で再生された。
会議室だろうか？大きな二つ扉の前で足を止めたオスマン様にここが目的地なのだとわかる。
無言で放たれた荘厳なドアの向こうには、知った顔に知らない顔。10人は居るだろう男たちがコの字型に座っていた。
正面には矢張り、射抜かれそうな程鋭い眼光の総統閣下の姿が見えた。
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
