▽謎の三人衆 ページ17
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これは死んだわ。重力に任せて落ちる己に確かにそう思ったが、人という生き物は案外しぶとい。
フワッと浮き上がる内臓の感覚に危うく吐きかけたりしたが。
庭に降りた所で私は降ろして貰えず、男の肩の上で揺すられていた。
…万が一吐く時は、絶対こいつを巻き込もう。1つ決心して私は静かに目を閉じた。
「おい、着いたで。生きとるお姫サン?」
『いい加減降ろして頂けませんか』
「え〜?嫌やわー」
質問には答えず簡素にそう言って強めに肩を押す。
ふざけた返しに自分の眉間に皺が寄ったのがわかる、クツクツとした笑いが目の前から聞こえた。
……ん、目の前?
「ゾムほんとに連れてきたんかっ!」
「ほぉん、さすがお前プロやな!」
「プロやで?」
担がれている為よく見えないが、確かに2人私と男以外の人物がいる。多分両方とも男性だ。
どちらの声かはわからないが、降ろしてやれ。と鶴の一声でようやく私は地に足をつくことを許された。
目の前に居た2人はやはり男性で、片方は金髪碧眼に長身でやや人相が悪い。もう1人は明るめの茶髪に金糸雀の瞳で童顔気味。
「お前がヴェネマーレア王国の王女で合うてるな?」
『……』
肯定以外認めなさそうな問いに、私は無言で返した。
知らない人に名前を教えてはいけません。前の世からのお決まり事である。
うんともすんとも言わない私を金髪は睨みつけたが、ふと茶髪の方が何かを閃いたように口を開いた。
「もしかしてアレか!俺らのこと賊か何かやと思ってる感じか?」
『少なからず、私には窓から飛ぶ知人はおりませんので』
ちらりとフードの男を見遣ると他2人は豪快に笑い出した。笑い事じゃない、こっちは本気で死ぬと思ったんだから。
ニヤリと笑った金髪が愉快げに語る。
「初めてましてA王女、オレはコネシマ。この国の軍で働いとるモンや」
「同じくシャオロン。ま、別に覚えんでもええわ」
「どうも、お姫サンとこの鼠ですゥ」
「お前…まだ根に持っとんのかいな」
呆れた顔でボヤくコネシマさんとやらは、フードを指さすと「ゾムやで」と適当に紹介してくれた。
『それは…大変なご無礼お許しくださいませ。
A・クイント・マーレアでございます、我々国の軍人様が私に何のご用でございましょう』
人攫い紛いの事をしてまで、とは言えなかったが。
丁寧にカーテシーをして、ようやく令嬢らしい体裁を保つことが出来た気がした。
「オレらはただA王女に会いたかってん」
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (4月30日 18時) (レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ! (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます!続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます!続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します! (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます!初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします! (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あん肝ポン酢丸 | 作成日時:2019年8月4日 8時