▽走馬灯のような ページ2
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見つめるのは不敬だっただろうか。大股で此方へ来る男性に、静かに腰を折り頭を垂れる。
目の前に立った男性は小さく息を吐いた後、頭を上げるよう言った。見上げるように顔を窺い見ると先程の怒りは鳴りを潜め、困った様な面倒くさい様な表情を浮かべていた。
「すまんな、急に。ちょっと聞きたいことあるんやけど」
落ち着いた声色だ。にも関わらず、彼の声を聞いた瞬間私の心臓は酷くざわついた。
正確には彼の言葉を聞いた瞬間だ。
独特なイントネーション、母国にはない言葉遣い。
これは大陸の西の民族の言葉訛りだ。何もおかしくはない。
いや、違う、昔、聞いた、これは、日本の、
そして冒頭に戻る。一瞬遠くなった意識が足早に戻ってくる。
マズい。色々マズい。何もかもキャパオーバーだけど、私は今なんて言った？？
「かんさい……？」
マフラーの男はキュッと目を細め、訝しげな顔をしながら首を傾げた。
やらかした。首筋を伝う嫌な汗を感じながら、私は再び頭を下げた。
『な、なんでもな…ございませんわ、鬱様でしたらスティナータ嬢の所かと』
「……さよか。手間かけたわ」
じゃあ、と踵を返し建物内へと向かう男がそれ以上何かを言及することはなかった。
彼の不審な者を見る目を思い出す。というか、さっきの口の利き方は下手すりゃ不敬罪だ。
一気に身体の力が抜け、私はその場にしゃがみ込んでしまった。
たった言葉一つで私は有り得ないモノを思い出した。
そう、それは前世の記憶などという突拍子もない代物である。
頭が可笑しくなったのかとも思うが、前世の記憶の所為でこの世の常識に疑問を抱いていたとしたら納得がいくのだ。
兎にも角にも。確かに私には前世が存在したのだ。
日本という平和ボケしたような幸せな国の地味なアラサー女だった。
それが今はどうだろうか。ヴェネマーレアの民を象徴する青い髪、一族揃いの紫玉の瞳。どこのコスプレイヤーだと言われんばかりの色彩を身に纏っている。
転生ものにある悪役令嬢でもましてやヒロインでもない。良く言って人質、言動次第では捕虜となり得る立場だ。
それを自覚した瞬間私は生存ルートを探るでもなく、只々死にたくなった。
一生誰かに生殺与奪権を握られてるなんて恐怖しかない。思考はすっかり前世のものへと変わっていった。
生を果たすとか、もうね、無理。一思いに楽にして欲しい。なんとか令和の世に帰してくれ頼む。なんなら平成でも構わないから。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
