▼疑わしい ページ6
ci_side
「で、なんで俺がどこぞのご令嬢なんぞを監視せなダメなんですか」
『櫻鏡園に居る女の1人を監視するように』突然そんな任務を与えた当の本人は、なんとも言えない顔で一枚の紙を見せてきた。
「これ見てチーノはどう思う？」
「なんですこれ？」
「ヴェネマーレアの王女さんがな？商人宛にこれ書いてん」
毎度検閲の為に開けられるにも関わらず、丁寧に閉じられていたであろう封筒と共に綺麗な字で綴られた手紙を渡される。
本の商人に宛てて、歴史書の類を持ってきてほしいと書かれていた。
「はぁ〜珍しい女っすね、歴史書なんかに興味持つなんて」
「やんな。けどなぁ今迄こんな事なかったんよ」
「……もしかして、またですか？」
俺の問いかけにオスマンさんは、その柔らかな表情に陰りを見せた。
また、というのは数ヶ月前に遡る。
某国の令嬢が母国との間で暗号を混ぜた文通を行なっていたのだ。
敗戦国の令嬢でない限り、母国との手紙のやり取りが許されている。当然ながら検閲はあるが上手いことやっていたようで、発覚が遅れたとのことだった。
櫻鏡園で見聞きしたことを流していたようで、内容に特秘事項はなかったものの結果その令嬢は処刑。令嬢の母国は領土の一部を我々国へと譲渡することで一件は幕を閉じた。
「商人伝いに情報でも漏らされたら面倒やなぁ」
「そういうこと。ぼんやりした感じの子やったし、疑いすぎかもだけどな」
念には念を入れて、と険しい声色で告げるオスマンさんに俺は黙って頷いた。確かに商人相手であれば令嬢は直接話しをする事が可能だ。
暗号の件があってから、櫻鏡園を行き来する手紙は全て彼が直々に検閲している。
「わかりましたわ。その令嬢と商人の奴を見とけばええんやな？」
というのが約一週間前の話題である。城内へ入ってきた商人達に声をかける。目的は言わず一緒に行かせてもらうと言えば、商人らは大袈裟なまでに頭を下げた。
『ご機嫌よう』
柔らかく微笑む女に、何か出来る様な気概は感じられない。
商人の話を聞きながら本を吟味する姿に特に怪しい様子もない。考えすぎだっただろうかと思うと、不意に女と目が合った。
何見てるんだ、そう言わんばかりの紫玉の瞳。疑われてると理解しているのか鋭い視線が俺を射抜く。
なんやコイツ、オスマンさんの言ってた感じとちゃうやん。
コイツには何か裏がある、詐欺師の様な感を持つ俺にそう思わせるには充分な出来事であった。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
