▽不慮の事故 ページ37
・
やっぱり、どうにも見つからない。
あの後どれだけ探しても、藍色のリボンが見つかることはなかった。それどころか他の小物まで何点か所在が分からなくなっている。
『いくらなんでもボケ始めたなんて事ないよね…？』
流石にそれは無いと信じたい、いくら精神年齢がカサ増しされたからといえ痴呆になる歳でもないはずだ。
失くしたのはクシに口紅、それから本が一冊行方不明だ。外に着けていくリボンはともかく、他の物は外に持ち出した事もない。
『どこか屋敷の中で置いて来ちゃったのかな』
後で他のご令嬢方に聞いてみよう、今日は商人たちが園にやって来る日だし皆広間に居るだろう。
相変わらず騒がしい音を立てて行商人たちが屋敷へと入ってくる。最近までずっと一緒に訪れていたチーノ様は前々回くらいから姿を見せなくなった。
本人曰く「必要がなくなった」かららしい。
「ご機嫌よう、いらっしゃいましたの」
『ええ、ご機嫌よう』
テンプレ化してきた言葉で、扉の近くにいた令嬢に挨拶をする。この娘はスティナータ嬢の仲良し3人組の内の1人だ。
普段ならいつもの3人と一緒に居るのだが、どうやら他の娘達の姿は見えない。丁度良い、彼女に聞いてみようか。
『ねぇ、何処かで藍色のリボンご覧にならなかったかしら？』
「さぁ？見ておりませんけど、落とされましたの？」
『そうみたいで……それ、可愛いですね』
「……ええ、一目惚れしてしまって』
彼女の手の中には、細かな模様の入った木製のペーパーナイフが握られていた。
「そう言えば、総統閣下の元にお勤めになられたのでしょう？」
『え？ええ、まあ……』
突然の話題振りについ尻込みしてしまう。
言えない、うら若きご令嬢に前回は銃戦術の効率の話をしていたなんて言えない。
「羨ましいわ、本当に…。調子の方はいかが？」
『そ、そうですね。なんとかやって……っ！？」
ドン！！と左側から謎の圧力を受けて、上体が傾く。
鋭い痛みが一瞬右の手首に走った。
間を置いて周囲の令嬢方の悲鳴が聞こえた。
「まぁ大変！！血が…！」
『え？あ……』
該当箇所を見るとスパンと横長の一文字に皮膚が切れていた。幸い傷は深くなさそうだが、傷口が大きく出血が酷い。
「A令嬢！！ああ、私はなんてことを」
『スティナータ嬢…』
私の左横には彼女とお付きの他2名が立っていた。
状況から察するに彼女が私にぶつかってしまい、よろけた私がナイフに腕を当ててしまったのだろう。
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
