ジョーカー・ゲーム短編・夢 (ページ2)

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そんな話も暫くすればうやむやになった。
珍しく酒に酔っていたのかもしれない。三好が自分に酔っているのはいつものことだが。

季節が巡り、任務のため同期がぼちぼちいなくなり始めた。

三好がいなくなった夜のことだった。
自室のベッドに放っていた本に書き置きが挟まっていた。

『次会ったら、僕を好きだと認めること』

教科書のような綺麗な文字でそう綴られてあった。

三好が昨日食堂で自分の分の夜ご飯だけ作って食べている時に珍しく苛立ったように「いい加減観念したらどうだ」と私に言った。その時はぴんとこなくて、ああ、そうだねと曖昧に答えを返した。深い溜息を返された。

ああ、惚れるか惚れないかだとか言っていた、あのことか。

即火中と書いてあったので、言われた通りにその書き置きは燃やした。

諜報員の一人が任務中に命を落としたという話を耳にした。気になってその諜報員は誰だったのか詳しく聞くと三好だそうだ。

気づいていますか。あなた今、相当酷い顔をしていますよと、実井は私に教えた。酷いのはお前だ。言い方に気をつけろ。

三好がこの世界にいない。もうあんなくだらない賭け事に興じることもない。あれは私を退屈させないための不器用な心遣いだったのかもしれない。気取っていて、プライドが高くて、ちょっとのミスでも手厳しく指摘してくるみみっちい男。でも、時々彼はとびきり私に甘い顔をした。

私はこれから先なんども誰かと三好を比べ続けるだろう。三好は私でさえ気づいてない私の気持ちに気付いていたのかもしれない。

今の任務を遂行させたら諜報員の仕事から離れよう。そう結城さんに相談を持ちかけるよりも前に程なくしてD機関は解体された。