今は（ランドールside） ページ49
あいつを見続けていたら少しなら表に出す機会をくれてやってもいいと思う程には絆されていた
今までのあいつの行動を見ていたから情が移ったか、あるいはあいつに俺の成分が混ざった様に俺の魂もあいつの成分に犯 されてトチ狂っちまったか
何にせよ口喧嘩しつつも過す日々は、マイクの奴と馴れ合ってた時代を思い出して懐かしく、楽しかった
あの日までは
違和感を覚えなかったわけじゃない
ただ気づいた時には全てが遅かった
「今回君の出る幕は用意してあげない。全部僕一人でやる。だから邪魔しないで。」
『っおま！』
アズールの野郎が用意した薬
俺に説明した時は【少しだけ魂の力を強めて他の魂を抑えつけ易くなる】と言っていた
が、実際蓋を開けてみればその効果は絶大すぎた
俺との契約で精神的に追い詰めるだけでは乗っ取れない位にあの薬はあいつの魂を強くしていた
それでも1錠だけならまだ可能性はあった
だがあいつは1錠だけじゃ飽き足らず不安のあまり毎日毎日、挙句の果てにゃ短期間で一年分の薬を全部飲み干しやがった
信じられるか？
そのせいで強化通り越して飽和してあいつの自我はどんどんと薄れていった
そのくせ俺はあいつの身体を乗っ取れなかった
どんどんと俺と同じ末路を辿ってゆくあいつの姿をただ見ているしかできなかった
その絶望感がわかるか？
それと同時に、信用されていなかった事に少しだけ傷ついた
自分でも驚くぜ
いつからこんななまっちょろい奴になっちまったのやら
結果としてあいつは俺の暗黒大学時代のエピソードをほぼほぼなぞってみせやがった
あぁもう、最悪だよ
あのお人好し馬鹿は最後の最後、止めの一言を貰いにわざわざ出向いてアズールのクソ野郎に心滅多刺しにされておめおめ帰ってきたんだからな
これで俺にまで見捨てられたらいよいよこいつ精神崩壊しそうだ
こいつ俺みたいに復讐の念にかられる様な奴じゃないし
何より全部自分が悪いと思っていやがる
極めつけは
「僕がもし今回より悪いことをしそうになったら、絶対に止めてね。魂を傷つけてでも。」
だとよ
ふざけんなって話だ
これ以上俺と似た人生辿らせてたまるか
見てて胸糞悪いっつの
……だが、あいつが復讐心に駆られる程絶望していないのは好気と言える
昔の俺はそれこそ周りが見えないレベルで復讐の鬼と化してた
こいつはまだやり直せるレベルには心に余裕がある方だ
社会人時代のあの事件みたいな事に手は染めない筈
そうさせない為にもまずは魂の回復とこいつの心のケアが第一だな
「今は大人しくしといてやるよ。兄弟。」
そう言って俺は頭を撫でてやった
透けたけど
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