【弱虫ペダル】不器用な恋愛事情【荒北靖友】

9話　何となく、それだけの言葉。 ページ10

私の目に映る景色全てが、スローモーションに見える。
あと数秒もしないで私の体は、地面に叩きつけられるのか、そう思った私は、目をぎゅっと瞑った。
でも、数秒経っても、何秒経っても、冷たい地面の感触はしない。
それどころか、暖かく柔らかい物に当たっているのは、きのせいなのか…………
「オイ、早く目を開けろ」
私と荒北君しか居ない筈だった、図書室に男の声が聞こえた。
ということは……………
『あ、荒北君！？』
目をゆっくり開けた先に見えたものは、荒北君の顔で、突然のことで私は、勢い良く荒北君の体を退けてしまった。
でも、すぐに我に返り、すぐさま荒北君に謝った。
『ご、ごめん！！助けてもらったのに！！……び、びっくりしちゃって………』
何回も謝っていると、荒北君に「いいって」と、言われた。
「つーか、何を取ろうとしてたのォ？」
「取ってやるから、教えてヨ」と、続けて言われたので、小さく「あ、あれです」と、お目当ての本に指を差した。
「あれェ？来野ちゃん、自転車興味あんのォ？」
『ある……というか……って、あれ！？』
私は、突然叫んでしまった。
何故かって………
『荒北君！私の名前覚えてくれたの！？』
「アァ？名前？あー、去年同じクラスだったからなァ……何となく覚えてた」
何となく、という言葉を聞いて私は、少しだけ…………



………心臓がドクリと動いた気がした。

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