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「あーくそ」
思わず貴族らしかぬ言葉をつぶやいて、僕は瓶の破片を集め始めた。多分、最後にレパロくらいは使ってもいいだろう。頭の中でぼんやりと考えていると、大きなガラスの破片で、手を切ってしまった。赤い血が地面に滴るくらいには、出血をしていたが、それでもこの程度の血。そう思って作業を再開させようとする。
「大丈夫か？A！」
「この程度」の血だというのにドラコは顔を青ざめてベッドの上から僕に問うた。僕は大丈夫だよと言葉を返すも、彼は続ける。
「スネイプ先生は君に厳しすぎる。このくらいのこと、その辺のグリフィンドール生のせいにしとけばいいものを」
至極真面目に、少し常識はずれなことを言うドラコ。彼にもう一度大丈夫だと告げ、血の流れる自分の手を、ペロリと舐めた。
「ほら。止まったでしょ？」
手をヒラヒラとさせて、すぐにその手を閉じる。ドラコは心配そうに、また口を開いた。
「でも、マダム・ポンプリーを呼ぶべきだ」
「ドラコ、本当に大丈夫だってば。それより君の方が怪我をしているんだから」
そう言って思わず彼に手を差し出せば、どこからか現れた包帯が、傷ついた僕の手を包む。
「汚い手でドラコに触れようとするな。それともなんだ、君はその程度のこともわからないの？」
声の方向を見れば、澄ました顔をしたテュフォン。相変わらずむかつく顔で、僕を見下ろしてくる。それがどうしようもなく腹が立って、殴りたいと動く手を必死に動かした。
「……本当に君は僕に感謝して欲しくないんだな」
「当たり前だ。気色の悪い」
ふんっと鼻を鳴らし、テュフォンは言う。やっぱり、どうしようもなく腹がたつやつだ。
「……」
少しして、彼は杖を握り直した。呪文を唱えながら杖を動かす。すると杖の動きに習うように、瓶の破片はキラキラと輝き、元の形へと戻っていった。
「はっ？」
ばら撒かれた液体は綺麗さっぱり吹かれ、地面に落ちたガーゼや包帯もあっという間に元の場所に戻る。
「どういうつもり？」
それがなんとなく、ばかにされたような気がして、テュフォンを睨む。その僕の声のトーンに、先ほどのようにグラップやゴイル、ドラコが震え上がるのが目に入った。しかしテュフォンは相変わらずのむかつく顔で、予想外のことを口にした。
「今回だけは僕にも非があった。それだけのことだ」
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作者名：あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年5月13日 9時
