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「ハリー、A、おかけ」
先生に勧められて、僕らは先生が魔法で出現させた肘掛椅子にと座った。ちらりとポッターを見ると、たまたま彼もこちらを見ていたようで、目があってしまう。気まずくてお互いすぐにそれをそらした。
マダム・ロスメルタからいただいたという蜂蜜種を口にしながら、ポッターが先生に先ほど聞いた話をしているのを見つめていた。
「つまり、じゃ。あの屋敷の相続権は、A、ハリー二人にあるということじゃ」
「……Aが、受け取るのが妥当だと思います。彼は本当の、シリウスの息子なんだから」
「それは気前の良い話じゃ。あの家は、ブラック家の血を継ぐ者でなければ受け継がれぬ、呪いもかかっているようじゃしのう」
「それなら、やっぱりAが……」
「そのAも、相続を拒否したのじゃよ。君の方が、ふさわしいと」
ポッターの瞳が僕を見た。僕はそれを無視して、眉をひそめたまま先生を見つめてる。
あの家は、ブラック家の誇りと、その歴史が刻まれた家である。でも、それ以上に、あの家はブラック家の愛の結晶でできているものなのだと、僕は思うのだ。だから、きっと相続するのはポッターがふさわしい。僕はあの人と、家族らしいことは全くしていないけれど、ポッターは違うのだから。
「しかしながらそれでは、相続の権利はベラトリックス・レストレンジに移行することなる。それは、我々にとっても好ましい話ではない」
「あの、」
初耳な内容を聞いて、僕はここへ来て初めて口を開いた。
「その話を、先生は僕の前で堂々となさりますが、僕がミセス・レストレンジにするとは思わないのですか？僕はあなたの味方ではないんです」
今、この時にそぐわない話かもしれないけれど、どうしようもなく気になったのだ。そうするとダンブルドアは、優しく微笑んだ。
「それならばA。君はヴォルデモートに、」(僕は思わず眉をひそめた)「君の大切なご家族の家を、荒らされても良いのかな？」
「……」
「ヴォルデモートは君の大切な誇りを、なんの疑いもなく壊すじゃろう。そしてそれを、誰も止めたりはせぬ。それが、君は平気でいられるのかのう」
「いえ、その、すみません」
僕にとって、あの家はあの人に従うよりも何倍も大切なことなのだ。なによりも、なによりも、この世で一番。バカなことを聞いたと、視線を下ろした。
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2021年9月20日 0時
