穴熊の女 ページ24
それから、どれくらいの時が経ったかもはや覚えていない。ただ時期は、大切なあの人が死んだと報道される数ヶ月前のことだった。
「ロジエールの本家が途絶えた……？」
衝撃的な言葉であった。それが意味するのは、我が甥であるエバン・ロジエールの死を意味することであったから。
エバンは学校を卒業してわずか4年ほど。すぐに結婚をしたが一人目の子供は流産してしまったのだ。だから、子供はいなかったのである。
エバンは、真っ当に育ったとは言えないだろう。残虐に成長した彼は死喰い人には非常に向いてはいたけれどしていたけれど、それでも、父親の責任を押し付けられ、母親からは育児を放棄され、おそらく祖母からはひどいネグレクトを受けていた。
私はそんな甥を放置していたのだ。あの人にそうするべきだと言われたから。それが、エバンのためになると聞いたから。それが真実であったのか、そうでなかったのか、私にはわからなかった。
「……」
「役立たずが」
衝撃を受けていた私の隣で、彼はボソリと呟いた。思わずそちらを見る。
「なんだ、レイチェル」
「え、ロジエール家は、私の……」
「お前を否定し続けたあの家は途絶えるのだ。こんなにも良いことはないだろう」
分霊箱を作りすぎて、歪んだ顔が、空に歪んだ。私の愛したその人の面影は、すでに__。
「お前のためだ、レイチェル」
彼は手を伸ばして、私の頬に触れた。そして優しく撫でる。学生時代と、同じ手つき。いつもの彼。私の大好きな。
「お前のためにやったことだ」
「……」
学生服を着た私が、頭の隅で歓喜している。私のために！彼が！動いてくれたのだ！
大切な彼に褒めてもらえた。私をたった一人愛してくれる彼に、認めてもらえた。嬉しくて、嬉しくて、たまらない。私の生きる意味とは、まさしく彼その人なのだ。
しかし、またどこかで、レギュラスやエバンの顔を浮かべている自分に気がついた。気がついてしまったのだ。
私には彼しかいない。彼に捨てられたら生きていけない。彼のそばにいるからこそ、私の存在に意味が与えられるのだ。
わかっている。そんなこと。
彼に認めてもらえないと、私はあの頃の可哀想なレイチェルに戻ってしまう。誰もそんな人間を、小さな小さな、出来損ないを、愛してくれるわけがない。彼以外に。
わかってる。わかってる。
だけれど私の頭からどうしてか、彼ら二人の顔がいなくなることはなかったのだ。
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あんころころもち@多忙(プロフ) - マニ。さん» ありがとうございます🫶 そのお言葉を励みにがんばります！ (3月7日 2時) (
レス) id: e53fc357d1 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - あんころころもち@多忙さん» ✉️。こっちの作品も面白いです！後だと茶番の方とか遅れてごめんなさい💦、これからも更新応援してます。☺️ (3月5日 21時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
あんころころもち@多忙(プロフ) - あまねさん» やたーーーありがとうございます❤️ (9月16日 15時) (レス) id: 59f64f1814 (このIDを非表示/違反報告)
あんころころもち@多忙(プロフ) - ｴﾇｴﾇさん» ありがとうございます☺️しっかり闇の帝王なヴォルさんを作りたいがための作品です！読んでくださってありがとうございます〜❤️ゆっくりな更新ではありますが、よろしくお願いいたします🙇 (9月16日 15時) (レス) id: 59f64f1814 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - たああああああああすき (9月9日 16時) (レス) @page37 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2021年8月25日 18時
