殺気と家業 ページ2
極東の島国に生まれた少年・名を永(えい)という。
生まれてまもなく両親を火災でなくした彼は、とある金持ちの夫婦に跡取りとして引き取られた。
自分の子供ではなかったが心優しい夫婦は彼を愛情を持って育てた。
お陰ですくすくと成長した永だが、跡取りであるにも関わらず家業を知ることはなかった。母親に聞いても微笑まれ誤魔化されるだけであった。
しかし、彼が１２の時永は知ることとなった。不吉、恐ろしく、そして血塗られた「家業」を。
「暗殺者」それがこの家の仕事だった。しかも、この島国で一番と噂されるほどの。
「睡魔」裏社会でその名を聞いた者は身を震え上がらせる。
狙われれば“死”は確実。目撃者は口封じの為殺される。
たった１２歳の子供では抱えきれぬ秘密を永は父と母から聞かされた。
「アハハハッハハハッアハッフフッフックッハハッ．．．」
突然狂ったように笑いだした永を見て、夫婦は「やはりダメだったか．．．」とでも言うように顔を見合わせると彼の肩に手を置いた。
しかし、夫婦はその手を思わず引っ込めた。
夫婦が永から感じたのは「殺気」。当主であった父も一瞬恐怖を感じるほどの。
「当主に相応しい．．．永、お前はやってくれるのか？お前は俺たちの本当の子供ではないし、わざわざこんな世界に足を突っ込む必要もない。それでもお前はやってくれるか？」
父親の放った言葉に精一杯応えんとする永は笑顔のまま首を大きく縦に振ると、今まで溜め込んだものを吐き出すかのように殺気を放出した。
その日１２歳の幼子は暗殺組織「睡魔」の当主となった。
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作者名：夏流 | 作成日時：2015年9月26日 23時
