その質問は、 ページ8
実は、1つ、杏寿郎に、答えて貰えなかった質問がある。
《どうして、私は何も覚えていないの?》
杏寿郎の瞳は確かに揺らいでいた。
その向こう側に何かがある、そう感じた。
《それはまだ、知る時でない。知るべきでない。君にはまだ…》
杏寿郎はまだ何か言いたげだったが、そこで会話が途切れてしまったのだ。
でも、私は杏寿郎がそう言うなら…と深く知ろうとしなかった。
何にせよ…もう過ぎたことだ、今更気にしたって、何も変わらないんだ。
そう自分に言い聞かせ、私は静かに布団から立ち上がった____
___私はこの屋敷を探索することにしたんだ。
一日中、薄暗い部屋で寝たきり…
そんな自分が少し嫌になった。
変えようと思った。
(なんて、昨日までそうだったんだけどね、笑)
…そして、新しく記憶が戻るかもしれない。
部屋から出ても、厠に行くくらいだった。
(少しの運動にもなるかも…)
そんなことを考えながら、私は陽の当たる明るい廊下を、1人ふらつきながら歩いた。
「はぁ…」
今は、杏寿郎のおかげで
雲ひとつない明るい気持ち。
その、はずなんだけどなあ
なんだか、私の心には少しモヤがかかっている
(やっぱり、何で記憶がなくなったのか、知りたい、かも)
最初はそれくらいの、ほんのちょっとの思いだった。
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作者名:ベリコ | 作成日時:2021年3月10日 20時