荒げられた声 ページ13
「ありがとうございます。あと…私が記憶を失った理由、知ってますか?」
「…ッ」
胡蝶さんはすぐ前まで合わせていた目を私からそらした。
「どうしたんですか」
絶対に何か知っている。
聞きたい。聞きたい。知りたい。
「すいません。これは私が答えることじゃないです」
「どういうことですか?」
「ももさんはとても衝撃を受けると思います」
「それでもいいです」
「よくないんです!!」
胡蝶さんが珍しく声を荒げ、驚いた。
「煉獄さんが、悲しみます。あなただけの問題じゃないんです」
「そう、なんですか、でもなんで杏寿郎が」
「煉獄さんにとって、ももさんは婚約者だったんです」
「え?」
「やっぱり、煉獄さんは言ってなかったんですね」
「初耳、です」
「私が言えるのはここまでです。早く鬼殺隊に戻ってきてくださいね」
そう言った胡蝶さんの笑顔は張り付けたものでなかった気がした。
「は、い」
胡蝶さんも杏寿郎も同じことを言った。
鬼殺隊に戻ることで、私は私になれるのだろうか。
「ありがとうございました」
私は部屋から出た。
ほんの30分間の会話だった。
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作者名:ベリコ | 作成日時:2021年3月10日 20時