怖い ページ2
煉獄さん、だったっけ。
その人は私にたくさんのことを教えてくれたらしい。
私は知らない。
私は何も覚えていないんだ。
それは、本当に、私だった?
鏡に映る自分が嫌だから鏡を無くした。
人と顔を合わせたくないから、誰も来ないように椅子を無くした。
殺風景になった部屋で、今日もまた私の元へ来る不思議な人が1人。
「もも、調子はどうだ!」
いつも声がでかくて、熱い貴方に私は少し苦手意識を持っている。
それは、明るい男の人が嫌いだからじゃない。
それは、声の大きい人が嫌いだからじゃない。
怖い、から。
全部私の我儘になってしまうけど。
私がどれだけ「覚えていない」と伝えても、どれだけ冷たく突き放しても、懲りずに私の元へやってくる。
煉獄さんという人だけだった。
最初の頃は、10人くらいは毎日来ていた。
けれど、それは日に日に減っていった。
理由は、簡単。
私が何も覚えていないから。
私が常識のない人間だから。
私が全て悪いから。
私は、皆にとって"毒"だから。
皆、口を揃えて、そう言った。
私から離れていった。
それで良かったのに
誰にも迷惑をかけずにいたかったのに
煉獄さんは
「ももは何も悪くない!!」と言い張るのだ。
本当に、怖い。
何を考えているのだろうか。
貴方の視線は何処までも真っ直ぐで、とにかく素直で優しい。
それに変わりはない。それは分かっている。
でも、きっと
心のどこかで私が悪いと思っているはず。
ずっと我慢していて、いつかは爆発してしまうはず。
そう、貴方に会う度、声を聞く度に考えてしまうのだ。
(もう、来ないで欲しいな)
もう胸が張り裂けそうなんだ。
限界なんだ。
痛いし、辛い。
私を裏切らない、見捨てない貴方にだからこそ
もう、嫌われたりしたくない。
(謝ろう、たくさんありがとうって言おう…
そして私の方から離れるんだ)
と考えていたのに…
煉獄さんはいくら待っても、私の元へ来なかった。
(もう、遅かったかな?)
希望を持っていた私を、嘲笑い、私は眠りについた。
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作者名:ベリコ | 作成日時:2021年3月10日 20時