歌って、踊って、恋をして。【アイドルマスターsideM】

１１.変化 ページ12

恭二side


慌ただしく帰って行った桜庭兄妹を見届けた後、俺は帰る為に鞄に手を掛けた。




恭二「じゃあ、俺も帰るな。お疲れ、プロデューサー」




プロデューサー「はい。お疲れ様でした、恭二くん」




プロデューサーに挨拶し、ドアを開けると見慣れた人が立っていた。




みのり「恭二、お疲れ」




恭二「みのりさん…！？帰ったんじゃ…」




みのり「ピエールを送ってから、また戻って来たんだ。ちょっと恭二と話したくてね」




恭二「俺と？」




みのり「うん。帰りながらで良いから、どうかな？」




恭二「俺は別に良いっすけど…」




みのり「じゃあ帰ろっか」




何の話か見当もつかないまま、俺はみのりさんについて行った。




みのり「…今日Aちゃん、必死に謝ってたね」




恭二「え…！みのりさん、見てたんすか？」




みのり「たまたま、ね」




恭二「たまたま…」




みのり「Aちゃん、恭二を勘違いしてた事、相当気に病んでたみたいだったから」




恭二「そうだったんすか…」




あの光景をみのりさんが見てた事も衝撃だったし、Aが俺の事で気に病んでた事も衝撃だった。




恭二「今まであんなに気にして謝って来た人、居なかったから、正直、驚きました」




みのり「そうだろうね」




ふっと笑った後、みのりさんは悟ったように口を開いた。




みのり「…あの娘…Aちゃんは、人を傷つけた事にしっかりと罪悪感を持って、謝る事が出来る、良い娘だね」




恭二「…そっすね」




その時、俺の笑った顔を素敵と言った、あの笑顔を思い出した。




恭二(俺の笑顔が良い…か)




すると、俺の心を見透かしたかのように、みのりさんが言った。




みのり「恭二、笑顔が素敵って言われて良かったね」




恭二「なっ…そこまで見てたんすか？」




みのり「だからたまたまだよ。それじゃあね、恭二。また明日」




恭二「あ、ちょっ…」




俺が止めようとすると、みのりさんはもう俺に手を振って行ってしまった。




恭二「………」




恭二(これからも、上手く笑えると良いな…)




そんな事を考えながら、いつもより軽い足取りで歩き出した。

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