酔いから醒めさせて【黒尾鉄朗】

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“ 木兎先輩！結婚おめでとうございます！”




“ 木兎！彼女の写真見せろよ〜 ”




“ どうやって出会ったんだよ！詳しく！”




乾杯のコールからだいぶ時間が経った .
先輩、同期、後輩問わず人気な木兎先輩は、
多くの人に囲まれていた。




木兎先輩に簡単に近づけない理由はこれだけじゃなく__




“ A！最近どうだ、あっちで少し話そうぜ ”




“ A先輩、もしよかったらこの後… ”




“ Aさん、隣いいですか？ ”




以前に関わった先輩、同期、後輩や、
関わったことあったかな？って社員に囲まれる。




いつもこういう会社の飲み会に参加しないせいでなのか、
会社でいつも一緒にいる京治が今は近くにいないからなのかで、
こんなに近づいてくる人達に適当に愛想を振りまいて対応する。




京治はもちろん女性社員に囲まれている状態 .




時々SOSの目線が送られてくるけど、
あんな大勢の女性社員の敵になったら..っていう恐怖で、
ごめん って目線で伝える。




やっと男性社員から解放されて、
テーブルの隅の方に座って食べ物に少し手をつけながら、
お酒と共に流し込む .




最初は決心していた“あの決意”も、
この祝福ムードや彼女さんの情報が耳に入ると、
辛い気持ちが勝って揺らいでしまっていた。




しかも、今日は木兎先輩に近づける状況じゃないから、
やっぱり来ない方が良かったかな..って後悔してると__




「 たくさん飲んでるかー？ 」




私の隣に座ったのは、
今でもキュン. としそうな輝いた笑顔の彼 .




『 木兎先輩！ 』




「 実はAをずっと探してたんだけど、やっと見つけた！ 」




私を喜ばせる言葉に高鳴りそうな胸を必死に抑える .




『 でも今日の主役がこんなところにいたら… 』




「 なんか今他の話で盛り上がっててな、




今がチャンスだと思って抜け出してきたんだ！




俺はAと話したかったからな！」




あぁ、ダメだ .
彼の裏表のない笑顔と言葉が目の前にあると、
このまま一緒にいるだけでどんどん好きになってしまいそうで。




彼への愛情が溢れる前に、
早く今日の目的をちゃんと果たしてケジメをつけたかった。




『 あの.. 』




「 そうだ！Aに伝えたいことがあったから来たんだ！」




『 ..伝えたいこと？ 』







「 俺、実は高校の時からAのこと好きだったんだぜ！ 」







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