酔いから醒めさせて【黒尾鉄朗】

16. ページ16

.





_____________






手をそっと振り払われる .




「 A、こういうこと簡単に頼んじゃダメだよ 」




『 ちがう..京治だから頼んでるのっ 』




「 俺だって男なんだよ、わかってる？ 」




心做しか京治の目が冷たく映った .
怒っているというよりはなにかを自制しているように .




『 わかってるよ...でも今日だけは隣に誰かいて欲しいの、おねがい 』




そう言って京治に目を合わせる .
彼の力強かった瞳が少し揺れた .




「 はぁ…わかったよ、今日だけだからね 」




『 ごめんね、わがまま言って 』




「 じゃあ今度菜の花のからし和え作ってくれたらチャラね 」




『 京治のおかげでもう得意料理になりました〜 』




そう言って ふっ と笑みを浮かべた姿はいつもの彼に戻っていた .





_____________






京治との距離約数センチ .
自分から誘っといてこの状況に緊張してる .




異性と添い寝“だけ”なんてしたことない。
でも今日だけは隣に温もりが欲しかった。




京治と私だってもう出会った時みたいにコドモじゃない .




知っている .




こういう失恋の時には、快感を求めて人肌に触れることが１番いいことを。




お互いに そういう経験. が無いわけじゃない。
その快感を知ってるからこそ、目の前の快感に溺れてしまえば、
もう戻れない関係になってしまうとわかってる。




だから私の今の感情のせいで京治を そういう行為 . で利用したくなかった。
１回でも利用してしまえば、きっと今までの関係が壊れてしまう。
私はこの居心地の良い関係を守っていきたい。




京治、ごめんね。
今日だけはこんなカタチでいいから利用させて___




京治の横顔を横目に見ながら心の中でそっと呟いた.





________






「 A眠れないの？ 」




『 ソファでは眠かったのにね、ここに来たら目が覚めちゃった 』




２人でベッドに入ってから約30分 .
最初は京治との今の状況について考えてたり、
今日のことをいろいろを思い出して眠れなくなっていた。




「 今日はそんなに眠れないよね 」




『 なんか面白い話してよ、京治クン 』




「 言い方が嫌だからやだ 」




『 ごめんって〜 ...じゃあ私が話してもいい？面白い話じゃないけど 』




「 どうぞ 」




１回目を閉じてすっと息を吸った。





_____________





.

17.→←15.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す