【ハイキュー】仮面をつけた天才 (ページ44)

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烏野のアジトについた。

場所は以前、夕から聞いていたので分かっていた。

烏野のアジトは結構大きな洋館で、門が閉まっていた。

チャイムがあるものの押すのには少しためらった。

…私はまだビビっているのだろうか。

落ち着け、落ち着け。

頭の中でそう何度も唱え、深く息を吸ってチャイムを押そうと手を伸ばした時だった。

「A？」

懐かしい声が私の名前を呼んだ。

「…夕」

振り返るとそこには黒い服を着た夕が立っていた。

以前より大分伸びた身長。

前は私とほとんど変わらなかったのに、今では私よりはるかに大きかった。

そして隣には坊主の知らない人。

私の知らない夕が増えて、少し寂しくなった。

「のやっさん、こんな美女と知り合いか⁉」

そう叫んだ彼に夕は反応しない。

ただ大きな両目から涙を流してしゃくりを上げる。

「…のやっさん？」

「…A」

涙を溢しながらも私を真っ直ぐ見つめる夕を見て、坊主の人が口を開いた。

「とりあえず俺、先中入ってるな！何かあったら呼んでくれ。

あ、大地さんには言っとくからゆっくり話してこい！」

そう言って笑う彼にすみませんと頭を下げると、気にするな、とニカッと笑った彼に言われた。

彼が中に入るのを見届けると、また夕に向き直る。

その途端目の前が真っ暗になった。

上から聞こえる夕のしゃくりを上げる声。

身体を包む温もり。

懐かしい匂い。

抱きしめられていると自覚するまでそう時間はかからなかった。

目を瞑ると温かい液体が頬を伝った。

夕の背中に手を回すと、私の背中に回した夕の腕にも力がこもる。

私達は抱き合ったまま静かに涙を流し続けた。