【ハイキュー】仮面をつけた天才 (ページ37)

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「A！」

走り去る彼女を思わず呼び止めた。

彼女の足が止まる。

でも振り向いてはくれない。

「今までずっとありがとな‼」

精一杯の笑顔を向けてそう言った。

「…私の方こそありがとう」

今度こそ彼女は走り去っていった。

どんどん小さくなっていくその背中を見てポツリと呟く。

「…好きだ」

彼女の家がマフィアだと言うのは知っていた。

俺の親は警察官で一度、部活仲間の鳳月Aについて聞かれたことがある。

嫌な予感がしてその時は誤魔化したが、後日気になった俺は父の書斎に忍び込んだ。

そこで知ってしまった。

それを知ったのは中2の時だったと思う。

彼女のことを知ったうえで好きになった。

俺なら受け入れられると思った。

でも…俺じゃお前を支えられない。

だから…

「…頼みます」

届くはずのない、彼女を保護してくれていたという人。

十中八九裏社会の人間だろうが、彼に頼む。

彼女を幸せにしてくれと。

俺にはできないことだから。

頬を流れる涙をぬぐい、立ち上がるとスマホを取り出して電話をかけた。

『ナイストス！』

『お疲れ。はい、ドリンク』

止まったはずの涙がまた溢れ出る。

もう少しだけ…。

遠くでサイレンの音を聞きながら、俺は静かに涙を流し続けた。