【ハイキュー】仮面をつけた天才 (ページ20)

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『動くな‼』

突然誰かの怒声が響いた。

その時私は父に殴られてキッチンに転がっていた。

何故キッチンかというと、それはまぁ…包丁があるからで。

その怒声に父は声のしたリビングへ向かった。

痛む体をなんとか動かし、そっとドアの隙間から覗くとリビングには10人程の男がいた。

『なんのようだ』

這うように低い父の声が私の耳に捕らえられた。

『金を出せ』

金目当て…か。

『はっ、お前らに渡す金などない』

父は馬鹿にするようにそう言った。

その言葉に向こうのリーダーがキレた。

バァン

銃を発砲した。

それを合図に手下の男達が一斉に飛びかかった。

父は攻撃を避けながら確実に1人ずつ減らしている。

流石にやばいと思ったのか、リーダーの目に焦りの色が浮かんだところで彼が私に気づいた。

必死の形相でこちらに来ると私に銃を向け、人質にとって逃げ出した。

父は応戦中だし、母と姉はこの場にいない。

唯一動ける使用人達では私を人質にとられていては攻撃できない。

そうしてリーダーは私を連れたまま車に乗り込んだ。

『…お前を使えばいくらでも要求できるな』

車が山道に差し掛かったところでリーダーがそう言った。

彼が道の端に車を止め、私に手を伸ばしてきた。

その瞬間、太腿から銃を抜き出して発砲した。

弾は男性の額を撃ち抜き、彼は血を吹いて倒れた。

…人を殺したのは初めてではない。

父に連れられて何度か殺したことはある。

でも、自分の意思で人を殺したのは初めてだった。

震える手で電話をかけた先は、家でも警察でもなく…

当時の彼氏だった。

それから暫くその彼のもとに匿われ、彼には私を死んだことにしてもらった。

そして私は殺し屋となり、裏社会に身を潜めていた。

鳳月Aという人間はもういない。

いるのは殺し屋の花咲A。

花咲、という苗字はその彼につけてもらった。

私のイメージにそっくりなそうだ。

本当は下の名前も変えようかと思ったけれど、彼が太陽のような笑みを向けて私に言った。

『Aにはその名前があってる！』