プリンスと私。 (ページ5)

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プリンスと私。5 ページ5

どれくらい話していただろうか。
水上さんのコーヒーカップはすでに空になっていて、私のカップの中の紅茶はすっかり冷めてしまっていた。

一通り尋ねたかったことを訊き終えた私は、答えてもらったことや教えてもらったことを漏らすことなく手帳に書き記す。

やっぱり東大王チームの大将を張るには並外れた努力をしているんだなぁと改めて目の前にいる天才に尊敬の眼差しを送った。

「まだ聞きたいことある？」

彼は優しくそう言ってくれる。

『いえ、これですべてです！すみません、長々と…』

「はは、気にしないで」

私がお詫びを言うと、彼は朗らかに笑った。
本当に、大学に入学してから私の周りの人は優しい人で溢れていることを改めて実感する。

じーんと身を震わせ、彼にぺこりと頭を下げる。
すると、彼は私にふと声をかけた。

「もし…」

珍しく言い淀む彼を、私は不思議そうに見つめる。
そして、何かを決心したかのように彼は私の目をしっかりと捉えた。

「もし、あの時君の心を奪ったのが伊沢さんじゃなかったら…」

そう言いかけたところで、私の視界に人影が入り込んできた。
驚いて顔を上げると、そこには。

『伊沢さん！？』

仕事中のはずの彼が、そこにいた。

乱れた呼吸の彼は、水上さんの背後に立ってその肩に手を置く。

「みーずーかーみー！！！」

不機嫌そうに伊沢さんが声を荒げると、水上さんは観念したかのようにふっと肩の力を抜いたように見えた。

「あーあ。なんてタイミングで来るんですか」

つまらなそうに口を尖らせる水上さん。
そんな彼の様子を見て、伊沢さんはさらに眉をひそめた。

「お前、ふざけんなよ！ていうか自分でこんなもん送ってきておいて…！」

そう言った伊沢さんの手には、彼のスマホを握られている。
その画面には、先程紅茶を飲んだ時の私の姿が写っていた。