プリンスと私。 (ページ4)

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プリンスと私。4 ページ4

『お慕いはしていました。ただ、最初は本当に尊敬しかありませんでした。たまたま高校生のときに見ていた東大王の番組で、なんてすごい知識を持ってる人なんだろうって思って…。そこからはもう少しでも近づきたいと、がむしゃらに勉強する毎日でした』

まるで昨日のことのように思い出される記憶に、私はゆっくりと息を吐きながら懐かしむ。

「それで本当にQuizKnockに入って、憧れの伊沢さんと付き合えちゃったんだ。すごいね」

水上さんはにこりと微笑む。
私もそれに照れ笑いを浮かべた。

『私もそう思います。東大に入れたたけで奇跡だったのに、まさかQuizKnockにも入れてその上…』

思わず顔を赤らめる私を、水上さんは優しい目で見つめていた。

「そんな強運なAさんだから、俺も惹かれちゃったのかな」

突然そんなことを言われ、私は思わず口を開けたまま微動だにすることもできなかった。

「はは、ほんとに可愛いね」

楽しそうにしている水上さんを見て、からかっているだけなのだと理解する私。
それはそうだ。
東大医学部のプリンスがこんなどこにでもいるような女にそんな甘い言葉をかけるわけがない。

私は落ち着こうと2,3度深呼吸をした。
水上さんて、そんな口説き文句をさらっと言えちゃう人なんだ。
これは女の子が放っておくはずがないなぁと思いながら、私は腕を組んでうんうんと頷く。

「東大王を観てて伊沢さんのことが気になった…って言ったよね。その時俺も出てたと思うんだけど」

確かにあの時は伊沢さんと水上さんと鶴崎さんの3人で番組に出られていた。
当時の記憶は鮮明に覚えている。
だが。

『…ごめんなさい』

あの時の私には、本当に伊沢さんしか見えていなくて。
何を犠牲にしてでも、どうしても伊沢さんに少しでも近づきたくて。

そんな胸の内は口に出せず、私は俯くことしかできない。

しばらくの沈黙の後、ふと水上さんが上着のポケットからスマホを取り出した。

「このカフェ、雰囲気良いね。写真撮っちゃお」

店内の様子を写真に収めた水上さんは、シャッター音を鳴らした後も数秒間スマホに集中していた。

私がまた紅茶を一口飲んでそんな彼の様子を眺めている。

「それで、Aさんの話したかったことって何かな？」

スマホを再度ポケットにしまった彼は、顔を上げて私に笑顔を向けた。
その瞬間、私は水を得た魚のように怒涛の質問を彼にぶつけ始める。
彼はそれに慌てることなく、一つずつ親切に答えてくれた。