だからどうか、友達のままで。12 ページ12
『お疲れ様です』
翌日オフィスに行くと、玄関には靴が一足だけ。
珍しく今日はほとんどのメンバーが不在らしい。
作業部屋へと行くと、そこには私の想いを告げるべき人がいた。
「お疲れさま」
彼は私を見るなりにこりと微笑んでくれたのだが、それはいつもの笑顔ではなかった。
少しだけそれが気がかりではあったが、これは彼に告白する絶好のチャンスだと思った。
ゴクリと生唾を飲み込みながら、私は自分のデスクの脇に荷物を置いた。
他のメンバーが来る前に、早く言わなきゃ。
ドクンドクンと鼓動が大きく脈打つのを感じる。
何度も口を開いたが想いが声になることはなく、私は今日も駄目なのかと自分への失望を募らせていくのだった。
すると。
ふと彼が、重たげな口を開いた。
「…Aに、言いたいことがあって」
その言葉に、唐突な不安感に襲われた私の心臓がドクンと跳ねた。
きっとそれが、いつもの告白ではないことを瞬時に悟ったからだ。
ゆっくりと彼の方を向くと、いつもの笑顔を失った彼が俯いていた。
「昨日、大学で同じゼミだった女の子に告白されて」
ぐらりと視界が揺らいだ。
その直後、すべてが真っ暗になった。
なんでこのタイミングで。
同じゼミの子ということは、学部が同じ私も知ってる子だろうか。
そして彼はOKをしたのだろうか。
絶望と疑問が瞬時に脳内を駆け巡る。
彼は誰が見ても魅力があって才能もある素晴らしい人だ。
人を惹きつける力もある。
そんな彼を好きになることなど、当然とも言えるだろう。
恐れていた事態がついに起こった。
じっとりと手に汗が滲んでいくのを感じた。
とてつもない焦燥感に駆られた私の心は、彼に向かって全力の愛を叫んでいた。
『…それで、こうちゃんはなんて返事したの？』
搾り出すように呟いたそれに、彼はより一層俯くのだった。
「…いつもなら断ってた。俺はAのことが好きだから、毎日振られてても好きだから。でも、Aにとって俺の気持ちは迷惑なんじゃないかって、ずっと考えてた」
そんなことないと、声を張り上げたかった。
だが、これこそが自分が彼の優しさと愛情に甘えてきた結果なのだと思うと、何も言うことができなかった。
だからどうか、友達のままで。13→←だからどうか、友達のままで。11
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Annie(プロフ) - 朔さん» 朔さんコメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(^_^) (2021年3月22日 20時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
朔 - ちょっち待ってえ…いい話 (2021年3月20日 21時) (レス) id: 06e8a73e80 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - なぎさん» なぎさんコメントありがとうございます！反応遅くなりすみません;;語彙力がなくなるほどお褒めいただけて光栄です(笑)またお楽しみいただける作品を作ります！！ (2021年1月13日 22時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - 新作ありがとうございます！！最高でした....！本当に ...まじで...最高(語彙力消滅 (2021年1月7日 22時) (レス) id: c2bf2a4148 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - ちくわ。さん初めまして、コメントありがとうございます！おかげさまで物凄く励みになりました(^^)！ゆっくりではありますが、更新は続けていきますので気長にお待ちいただければと思いますー！ (2021年1月7日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Annie
| 作成日時：2021年1月5日 22時
