Weeeeeeek【QK】 (ページ2)

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Tuesday_Yamamoto side

Aちゃんに“漢字を教えてほしい”と頼まれたので、僕と彼女は作業部屋の中央のテーブルで漢字勉強会をしていた。

最初は書き取りよりも読みから始めた方が良いかと思い、僕はノートに漢字を書き、それを彼女に読んでもらうことにした。

いくつか難しい読みの漢字を出題してみたが、彼女は特に悩む様子もなくスラスラと答えてくれる。

さすが優秀だ。

読みはこれくらいでいいかな、と僕は最後にある漢字を書き記した。

“託言”

「これは読める？」

そう尋ねると、彼女は今日初めて首を傾げながら

『たくしごと…？』

と自信なさげに答えてくれた。

「あ、そうそう。託すは音読みで“か”になるんだよ。あとは送り仮名に“ける”をつけて“かこつける”って読んだりね。これは“かごと”って読むんだけど」

解説をしてあげると、彼女はボーッとしながら

『託す…託言…託ける…』

とそれをブツブツと復唱し始めた。

「そう考えると、“託”一文字で“たくし”って読めなくもないよね。“よしあき”なんて絶対一文字で表せられないもん」

僕のその一言から、意図せず話の流れは我がQuizKnockのCEOへと変わっていった。

彼女が彼と付き合っているからこの漢字を引き合いに出したというわけではなく、本当にただの偶然だったのだ。

その後話題を漢字に戻し、

「じゃあ今度は書き取りをやってみようか」

と彼女に声を掛けたが、なぜか彼女は真顔で一点を見つめたまま微動だにしない。

不思議に思いながら彼女を観察していると、すぐに彼女はニヤリと口角を上げてやけに嬉しそうな顔をし始めた。

え？なんで？

首をひねっていると、彼女はおもむろに口を開いた。

『もし将来自分に子どもができて、もしその子が男の子だったら、託“たくし”って名前付けようかな…ムフフ…』

なんか変な笑いしてるなぁ。

彼女はいつもの可愛らしい笑顔でなく、何かを企んでいるような笑みを浮かべているのだった。

だがさすがは伊沢オタク、彼の話題が一瞬でも出れば、たちまち彼女の脳内では妄想が繰り広げられるのだろう。

その一途さに思わず拍手してしまいそうになったが、ここで僕はふとあることに気がついた。

でも、父と子が同じ名前の人だと紛らわしすぎるんじゃないかな？

海外では子どもに同じ名前をつけてJr.なんて呼ぶこともあるけど、日本ではまずあり得ない。

だが、横からそんな指摘をするほど僕も無粋な人間ではない。

まぁいいか。
とりあえず黙ってニコニコしておこっと。