匂わせちゃう系男子。8 ページ8
そろそろ出かける準備をしようと、洗面所をお借りして身支度を整えていた。
着替えて、髪を簡単にまとめて、お化粧をして…
自宅ではないので、少しいつもと勝手が違うことに戸惑いながらも、できるだけ丁寧に身繕いをする私。
リップを塗り終わり、あとは最後の仕上げにと、昨日伊沢さんからもらったイヤリングをするべくまずは右耳にイヤリングをつけた。
その時。
突然スッと洗面所に彼が現れ、私を背後からギュッと抱きしめた。
私は左耳にイヤリングをつける手を降ろし、されるがまま状態。
すると彼は、申し訳なさそうに小さい声で
「Aちゃんごめんね。今日打ち合わせ予定のテレビ局のスタッフさんから連絡あって、申し訳ないけど打ち合わせ時間を早めてほしいってことで、すぐ出なきゃいけなくなっちゃったんだけど…」
と呟いた。
それは大変だと、私はくるりと彼の方を振り返り
『もう出られます!』
と元気良く返事をする。
彼はそれに安堵したように笑みを浮かべて、
「ごめんね、じゃあ行こうか」
と私の手を取った。
リビングへと戻り、ポーチやコームなどをササッとバッグへと放り込んで、準備万端オールOK。
彼がそれを持ってくれて、2人で玄関の方へと移動する。
『お邪魔しました』
「また来てね」
先に彼が靴を履いて、私もそれに続こう…としたのだが。
「あ、その前に」
くるりと彼がこちらを振り返った。
『?』
私が首を傾げていると、
「ん」
少し姿勢を屈ませた彼が、私に向かって目を閉じて唇を差し出してきた。
なんだなんだとジッとその綺麗な顔を見つめると、ふとピンとひらめく私。
あ、キスかな。
そういえばベッドの中で彼とした約束をまだ果たしていなかったことを、私はこの時ようやく思い出すことができた。
彼は依然として目を瞑ったまま。
急激に羞恥心が込み上げてきた私だったが、自ら言い出したことなのだから守らなければ。
よし、と気合を入れて、少しだけ爪先立ちをした私だったが、彼の唇に触れるのは物凄く控えめになってしまい。
一瞬触れるだけの、軽いキス。
それでも私にとっては精一杯で、私は赤くなった顔を隠すように足元に視線を落とした。
すると。
「もっと」
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年9月16日 20時