匂わせちゃう系男子。【QK】 (ページ7)

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匂わせちゃう系男子。7 ページ7

そのまま2人でリビングへと戻って行った私達。

彼はふらりとキッチンの方へ行き、

「コーヒー飲む？」

と一言。

『あ、はいいただきます』

私がそう返すと、彼は「りょーかい」と言いながら食器棚からマグカップを2つ取り出した。

あの食器棚の下にはクイズの本がいっぱい入ってるのか。

扉の閉まっている下の戸棚をジーっと見つめる。

ふと、手際良くコーヒーを用意してくれている中、彼はこんなことを言い出した。

「ごめんね、Aちゃん紅茶の方が好きなのに」

マグカップの上に設置されたコーヒーフィルターにお湯を注ぎながら、申し訳なさそうな顔をする彼。

思ってもみなかったことを言われ、私はブンブンと手を振りながら

『そんなこと気にしたこともありませんでした。伊沢さんもお気になさらないでください』

と心からの本音を述べた。

確かにコーヒーよりは紅茶の方が好きだが、別にどうしても紅茶が良いというわけでもない。

「いつもAちゃんが来た時用に紅茶買っておこうと思うんだけど、忘れちゃうんだよね」

彼が悔しそうに唇を噛み締める。

そんな彼の優しさが嬉しかったし、私はもうそれだけで十分だった。

『そんなに頻繁にお邪魔するわけでもないですし、お気持ちだけで十分ですよ』

彼を気遣わせないよう慌ててそう伝えると、彼はなぜか急に表情を曇らせた。

「俺としては頻繁に来てほしいんだけどね。あ、美味しい紅茶買っておいたらいっぱい遊びに来てくれるかな？」

良いこと思いついた、とばかりに、彼はそれまで曇らせていた表情をパッと明るくさせた。

美味しい紅茶があってもなくても、彼の迷惑でなければいつでもお邪魔したい気持ちはあるのだが。

『ふふ、どうでしょうね』

それを素直に彼に告げるのは、少しだけ気恥ずかしくて。
私はごまかすかのように口元に笑みを湛えた。

そんな私の思いを、おそらく彼は感じ取ったのだと思う。

ふ、と彼も私に微笑みかけながら

「じゃあ今度一緒に買いに行こうね」

と嬉しいお誘いをくれた。

もし、彼と一緒にお気に入りの茶葉を選ぶことができたなら、絶対に私は彼に美味しい紅茶を淹れてあげようとすでに今から意気込んだ。

『はい』

その後、彼の淹れてくれたコーヒーを一緒に飲み、私達は幸せで充実した朝を過ごすことができたのだった。